公式戦全敗の3年生「悔いなくプレー」 今夏限りで廃部の名古屋大付

土井良典
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 野球部員が減り、今夏が終われば廃部が決まっている学校もある。最後の夏は、九回まで試合を――。そんな思いで愛知大会に臨むのは、名古屋大付(名古屋市)だ。

 主将の橋口慎太郎選手(3年)は五回コールド負けとなった昨夏、最後のマウンドに立っていた。

 投手兼遊撃手でチームの柱。1年の夏から試合に出ていた。好きな桑田真澄さん(元巨人)の動画を見て得た、ブレーキのきいたカーブを投げる。

 「勝利もそうなんですけど、この子たちに何とか、九回まで試合をやらせてあげたい」

 若山晃治監督(34)は話す。今の3年生は1年生から県予選や愛知大会(2020年の独自大会含む)の公式戦で6戦6敗、うち5試合がコールド。夏の白星は11年以来遠ざかっている。

 若山監督に野球経験はなく、今年、部長から監督になった。勝てなくても、自主的に練習に取り組む部員たちを見てきた。

 御宿(みやど)奏太選手(3年)は名古屋大付中学時代、同じ学年に部員がおらず、一人で練習をしていたときもあった。高校で野球を続けるか迷ったが、橋口選手と鬼頭宏昌選手(同)が入ってきた。「2人が入ってきてくれてよかった」と振り返る。

 いまの選手は6人。校外学習が盛んで塾に通う子も多いため、練習に全員がそろう日は限られる。

 4月、今夏が終わった後に野球部が廃部になることが決まった。今大会には、同じ名古屋市の緑丘や山田と連合チームを組んで出場する。

 橋口選手は連合チームでは主将ではないが、緑丘や山田との練習でも先頭に立ち、「ちゃんと捕れ」「もっと早く声、出してくれ」などと指示を出す。

 山田の水谷信也監督(35)は「名古屋大付の子たちは元気なので、ムードが明るくなった。試合で苦しい時でも声が出ている」。

 頼もしい後輩たちもいる。名古屋大付の大橋那和さん(2年)は、マネジャーから選手になった。規定で公式戦には出られないが、センスがよく、他の部員たちも刺激を受けている。学校では、生徒会の執行部に入りながら野球に打ち込んでいる。山田の女子選手、橘果怜さん(1年)は「いい見本が近くにいるので、がんばろうという気持ちになる」。

 若山監督は「廃部を受け止めるときは、みんなしんどい思いはあったと思います。でも割り切って自主的に取り組んでくれている」と評価する。

 橋口選手は「僕たちが帰ってくる部活がないと思うと寂しい。だけど、みんな悔いなくできればいいと思う」「まずは一勝。単打を重ねてチャンスをものにして守り勝ちます」。帽子のつばには「必笑」と書かれていた。

 10日に一宮球場で岩倉総合と初戦を迎える。(土井良典)