「官から民」流れは止まらぬ、でも… 尼崎USB紛失問題が問うもの
兵庫県尼崎市の委託企業が全市民46万人の個人情報が入ったUSBメモリーを一時紛失した問題で、第三者委員会による検証が始まった。「官から民へ」という大きな流れのなかで生じた騒動。何が問題だったのか。再発防止に必要なこととは何か。専門家に聞いた。
「個人情報をUSBメモリーで持ち運び、酔っ払ってなくしたという今回の問題は、基本的なミスとも言えない衝撃の事態です」
行政サービスの民間委託の現状に詳しい学習院大学の藤田由紀子教授(行政学)はこう述べつつ、民間委託に潜む二つの構造的な問題を指摘した。
幾重にもわたる委託、長すぎる契約に潜むリスク
一つは幾重にもわたる委託だ。行政が業者に仕事を委託すると、その業者が一部をさらに専門の業者に委託し、さらに実務を担う業者に委託して……。「このような多重委託により、行政側は実際の業務をどの企業が担っているか把握できなくなります」
尼崎市でUSBメモリーを紛失したのは、市からデータ移管の仕事を受けた情報システム大手「BIPROGY(ビプロジー)」が再々委託した企業の社員。市の担当者は、この社員を交えた形で複数回打ち合わせをしてきた。そのため、ビプロジーの社員と思い込んでいたという。
もう一つの問題は委託先の選…
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