高校生の頃のことだ。「私っておでこ狭いよね」と友人から言われ、「確かに! めっちゃ狭いかも」と答えたら、その日から距離を置かれてしまった。京都大学文学部の2年生、沼上瑞紀(みずき)さん(20)はADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断されており、自閉スペクトラム症でもある。
思春期になると、周りの女子たちは容姿などのコンプレックスを自虐的に語るようになった。相手から水を向けられた場合、触れてもいいけれど、まともに答えないほうがいい話題が存在するらしい――。沼上さんはそう気づいた。
ただ、周りのみんなは空気を読んで簡単に「返し」ができるのに、沼上さんはそれが苦手だった。失敗を重ねるたびにあれもダメ、これもダメという事例を頭の中に蓄積していったという。「まるで自分の中にあるフォルダーを『更新』していく感じ。今もそれが続いている」
忘れものがとても多い。時間の管理ができない。コミュニケーションが苦手。雑音が多い中では落ち着いていられない。授業のノートは取れず、レストランのメニューも読めない……。発達障害の特性から、様々な壁にぶつかりながら過ごしてきた大学生、大学院生に、これまでどう学んできたのか、どんな思いを抱いているのかを聞きました。同じ悩みをもつ子どもたちへの、「先輩」からのメッセージです。
幼稚園に通っていた頃から、友だちと遊んでいるときに順番待ちができなかったり、家でかんしゃくを起こしたりすることを親が気にしていた。
沼上さんが母から聞いたところでは、3歳下の妹は子育てしやすかったらしい。妹の健診のときに母が沼上さんのことを保健師に相談したのがきっかけで、7歳のときに診断を受けた。
小学校に上がるタイミングで、通っていた療育の施設から一部の指導だけを校内の別室で受ける「通級」を勧められた。「そのためには診断がついていた方が受け入れてもらいやすい」と言われたという。
小学校の担任から言われた言葉を今でも覚えている。
記事の後半では、先生や友達との出会い、浪人して受けた大学入学共通テストで初めて受けた「配慮」についても紹介します。
帰りの会だった。「体を傾け…
- 【提案】
「合理的配慮」ということばがあります。 障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負
- 【視点】
どんなに社会が障害を持っている方へ手を差し伸べる姿勢があったとしても、そもそも自分に障害があることに気づくことが難しいケースもある。それは、自分が気づけない時と周りが認めてあげられない時。今回のように、まずは、どんな障害があるのかを「知って