第17回息苦しい「忖度」の世界で細る中間層、納得と安心の社会保障への道は

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聞き手・井上充昌、浜田陽太郎
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 物価の高騰で、日々のくらしは厳しさが増しています。給料は上がらないのに税や社会保険料の負担感が強まり、細っていく中間所得層。「中間層の再生」の必要性が訴えられるようになりましたが、実際にはどんな選択肢があるのでしょうか。社会保障に詳しい中央大学の宮本太郎教授に聞きました。

 ――国民生活基礎調査によると、2003年は年476万円だった世帯所得の中央値は18年は437万円に下がりました。中間層がじわじわと地盤低下しているようにみえます。

 「中間層をいかに作り直すか」と言われるほど危うい状況にあります。正社員でも足場が崩れかけていて、自分はなんとか定年まで滑り込めても、「子どもたちは大変なことになる」という危機意識にとらわれている人がたいへん多いと思います。そのため、生活保護などの福祉を受けている人の状況を理解しようとするより「努力不足ではないか」というまなざしを向けてしまう。

忖度圏」と「孤立圏」

 今の世の中は「忖度(そんたく)圏」と「孤立圏」にわかれています。中間層が属してきた忖度圏は、いつも空気を読んでいないと追い出されてしまう場所で、ディフェンシブにならざるを得ません。「表を見てみろ、荒涼たる原野が広がっているぞ。あそこで生きていけるのか」と脅されるわけです。

 いざというときの社会保障制度は、主に正社員とその家族を守る社会保険が中心で、これは組織の「内付け」の保障と言えます。忖度圏から一歩外に出ると、つながりすら断たれる孤立圏に入ってしまう。中間層は忖度圏で我慢し続けることで安心を得てきました。でもその安心は、一歩間違えるとすべて失う、という不安の源にもなっています。

 ――児童手当は、今年10月の支給分(6~9月分)から、高所得世帯に特例で支給されていた月5千円が一部廃止されます。公的な現金給付には所得制限があるものが目立ち、中間層には直接の恩恵がないものも多いです。

 財政状況が厳しい日本では、児童手当やコロナ下の給付金に所得制限を設けるのはやむをえません。ただし、もっと納得感を得られる基準が必要です。

 給付がもらえないことで、もらえる人たちへの不信が生まれやすい。実は不信は政治にとって「おいしい」面があります。不安を抱える中間層の不信をあおって怒りを引き出し、崩れかけた中間層の支持を集めようとする勢力もあります。

 日本で国民皆年金、皆保険が実現したのは、税金を投入したからです。財源として保険料に税が積み上がっている仕組みで、実は見かけより多くの人が税の恩恵を受けている、とも言えます。

 それでも、社会保険を通しての還元だったために、払った分の還元感はありませんでした。75歳以上の後期高齢者医療を支えるために現役世代の健康保険から支援金を持っていかれているような、被害者意識の方が強い。そのあたりから考えていかないと、なかなか納得感は生まれないでしょう。

これからの社会保障のあり方について、宮本さんは「ベーシックインカム」や「ベーシックサービス」に言及しながら新たな提案を行います。

 ――給料は上がらないのに、社会保険料などの負担は上がる。還元されている感がないと、制度への信頼も失われませんか。

 年収600万円、700万円…

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