飲酒と相次ぐ「試し行動」 松ちゃんと「我慢比べ」の日々
それぞれの最終楽章・元ホームレスの物語(2)
NPO法人「抱樸」理事長 奥田知志さん
路上で出会ってから数年経てもホームレス生活を続けていた松ちゃんが2008年5月、僕らのNPO法人が運営する「自立支援住宅」に入居した。当時68歳。
その少し前、僕がいつものようにお弁当を渡しながら入居を促すと、松ちゃんはいつもと違い、笑ってはぐらかさなかった。僕はようやく「時」が来たんだと思った。「松ちゃん、元気なうちに入居して誰かを助ける人になってほしい。多くの人のために松ちゃんは生きるんよ」。そして2週間後、「わしにもできることあるやろか」と自ら入居を申し出てきた。
自立支援住宅は、野宿してきた人たちに生活の基盤を整えるのが目的だ。松ちゃんもアパートに入り、生活保護を受給した。入居者はここで半年間を過ごした後に「出発式」で送り出され、仕事に就いたり生活保護や公的年金を受給したりしながら地域で暮らすようになる。
ついに松ちゃんも自立の道を…