地元には今も更地…特別な日の試合 野村の投手「勝ちたかった」
7日、高校野球愛媛大会1回戦、野村2―3丹原
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野村の背番号10・福井広希選手(3年)は、7番レフトで先発出場した。控えだったが、「いいところで打つ」(宮本昇二監督)と起用された。「うれしかったし、やる気が出た」
野村がある西予市野村町は、ちょうど4年前の西日本豪雨でダムの緊急放流後に肱川が氾濫(はんらん)し、市街地の多くが浸水して5人が亡くなった。
ベンチ入り20人のうち、12人を野村中出身が占める。福井選手は災害当時、野村中の2年生だった。自宅は肱川に近く、家族7人と愛犬1匹で町内にある父親の仕事場に避難した。自宅はギリギリ浸水を免れたが、水や電気が通らず、1カ月ほど帰れなかった。
2カ月ぐらい経って野球部が再開した時は全然足が動かなかった。でも、「久しぶりに運動して、友達にも会えてうれしかった」。
野村に進学し、「運動神経はよくないけど、スポーツの中では野球ならできる」と続けてきた。町の中心部は今も更地が残る。「特別な日で、亡くなった人もいるので、地域が元気になってもらえる試合がしたい」と家族に話して臨んだ。
チャンスにヒットは打てなかったが、フライを確実に捕り、ベンチで「ナイスキャッチ」と迎えられた。
1点リードで九回裏を迎えた。「このままいけば勝てる」。だが、1死一、二塁で、打球が頭上を越えていった。一塁走者の生還を阻止したかったが間に合わず、サヨナラ負けを喫した。「地元にいいところを見せたかった」。悔しさをにじませながら「野球のうまい仲間とがんばってきてよかった。もっと試合がしたかった」と話した。(三島庸孝)
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