4番の息子へ監督が出した攻めのサイン 信頼する親子、有力校に大勝

土井良典
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 【愛知】9日、第104回全国高校野球選手権愛知大会1回戦、誠信19―1岡崎工科 

 「ストライクをとりに来るから、どんどん打ってけ」

 2―1と1点差に迫られて迎えた五回表、無死一塁のチャンス。カウントは、打者に有利な3―0。誠信の4番沢田鋼二主将(3年)は、父親でもある沢田英二監督のサインに小さくうなずいた。

 四球を待つ判断もあったが、「攻めるサインでうれしかった」と沢田主将。

 結果で応えたい。前の打席はフライアウトだったこともあり、高校通算32本塁打の豪快なスイングはここでは封印して、単打で次につなごうと思った。

 コンパクトな振りで4球目をたたくと、三遊間を抜けるヒットに。チャンスを広げ、5番打者の3点本塁打を呼び込んだ。

 これで、流れを引き戻した。有力校の岡崎工科に19―1の大勝。沢田主将は4打数3安打2打点。「いつもはぶんぶん振り回すんですけど、つなぐ意識がチャンスを広げると思った。ヒットを重ねてチームで盛り上げる野球ができた」と沢田主将。父の英二監督も「いつもは力みすぎるところがあるが、成長した姿を見た」。

 英二監督は、次男の沢田主将が幼い頃から練習や試合で家を留守にしがちだった。息子たちに野球を強制することはせず、キャッチボールもあまりしなかった。長男の影響で野球を始めた沢田主将が、自らが野球部を率いる高校を進路に選んだときには、驚きもあった。

 沢田主将は「親子鷹(だか)」と呼ばれることについて「気にしていない。父は僕の思い切りのよさを生かす指導をしてくれる」と話す。

 1年生のころに腰を痛めたとき、英二監督は自宅で息子のマッサージをした。学校では特別扱いできない。だからこそ、家では「一人じゃないから」というエールを30~40分の指圧に託した。それは今も続く。「力の入れ加減が絶妙」と沢田主将は言う。

 中学時代は軟式で2本塁打だったが、高校では強打者に。勉強でも学年トップクラスとなり、野球部の主将には選手間投票で選ばれた。父親としては、そんな息子の姿が誇らしい。

 沢田主将は「みんなでもり立てて、監督を甲子園に連れて行きたい」と次を見すえた。(土井良典)

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