介助続けた母に手をかけた夜 孤独の「ヤングケアラー」が迎えた限界

有料記事

柏樹利弘
[PR]

 「産むんじゃなかった」。夏のある夜、母からの一言で25歳の男は怒りを爆発させ、その首を絶命するまで強く絞め続けた。中学生のころからひとり親の母を介助する「ヤングケアラー」。人生の半分に当たる期間を介助に捧げ、我慢を重ねてきた男を限界に追い込んだものは何だったのか。

 6月13日、名古屋地裁岡崎支部であった初公判。29歳になった被告は白のTシャツにグレーのスウェットパンツ姿で法廷に現れた。裁判長から罪状について聞かれると、「間違いないです」と答えた。

 被告は2018年6月下旬~7月上旬、愛知県豊川市の自宅で母(当時55)の首を両手で絞めて窒息死させたうえ、遺体を押し入れにあった衣装ケースに入れて、約3年間放置したとして殺人と死体遺棄の罪に問われた。

「大変だろうけどがんばってね」

 公判でのやりとりから事件の経緯をたどる。

 被告は2人姉弟の長男。姉は祖父母のもとで養育され、被告は母と暮らした。スナックで働いていた母は再婚と離婚を何度も繰り返したうえ、親族からも絶縁されていた。10歳の頃から母子2人での生活になった。

 暮らしの様相が変わり始めたのは、被告が中学生の頃だった。

 母が不眠症パニック障害と…

この記事は有料記事です。残り3229文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

きょうも傍聴席にいます。

きょうも傍聴席にいます。

事件は世相を映します。傍聴席から「今」を見つめます。2017年9月~20年11月に配信された30本を収録した単行本「ひとりぼっちが怖かった」(幻冬舎)が刊行されました。[もっと見る]