79歳「勝っちゃん」のかき氷、秘伝の蜜とともに半世紀

羽賀和紀
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 高知県中土佐町久礼(くれ)は、カツオの一本釣り漁で栄える港町だ。

 町の中心にある大正町市場の入り口前にあるのが、西村甘泉堂(かんせんどう)。1950年から営業を続ける小さな菓子店。名物はかき氷。

 氷は、町内の釣具店から取り寄せた15センチ四方の特注品。機械で丁寧に削る。

 「ジャリジャリした感じがしなくて、しっとりした舌触り」と評判だ。

 そこに半世紀にわたり受け継がれる「秘伝の蜜」がかかる。中ザラ糖など3種類の砂糖と、水あめや蜂蜜を混ぜた蜜だ。

 「食感がね、市販のものとは全然違うんですよ」。切り盛りする「勝っちゃん」こと西村勝己さん(79)が、自信を見せる。

 50年ほど前、母親の冨雄(とみお)さんが10年かけて編み出したレシピを、勝っちゃんが受け継いだ。

 黄金色の蜜を口に含むと、ほのかに甘い。

 蜜が染み込んだ氷にガラス製の水差しで冷やしたシロップをかける。店の一番人気は、ミルク入り生イチゴ。700円。

 使うイチゴは、地元で採れた「紅ほっぺ」。氷の上に、秘伝の蜜と半解凍してミキサーでトロトロにしたイチゴをかける。仕上げに練乳を加える。

 「子どもが減ったからね。町が寂しくなった」

 店番をする勝っちゃんの妻知子さん(62)が、つぶやいた。

 勝っちゃんは、店の奥で蒸しパンを作っている。心なしか、表情がさえない。

 「年を考えると、この店もいつまで続けられるか分からないなあ」。店を継ぐ者はいない。(羽賀和紀)