優しくて温厚、ベンチでは一変 越谷東の青木君、監督からも相談

有元愛美子
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 (12日、高校野球埼玉大会2回戦、越谷東4―1上尾南)

 いつもは優しくて温厚。越谷東の青木空(そら)(3年)は試合になると、ベンチで表情を変える。選手たちの調子が振るわない時は「お前ら、下を向いてんじゃねえ」と活を入れる。

 本当はそんなにはっきりと物をいえるタイプではない。けれども、チームが少しでも強くなるために厳しい役を買って出た。

 勝利まであと1アウト。青木は、伝令としてマウンドに走った。

 「最後、集中していこう」

 2番手で登板した松井暁介(3年)は二飛に打ち取り、試合終了。青木は笑顔で仲間を出迎えた。

 中学2年生の秋、ヘルニアを患った。最初は痛みをこらえて練習していたが、重度と診断された。松葉杖なしでは歩けず、痛みで眠れない日々が続き、手術を受けることになった。

 高校入学前にも再発。野球部に入ったが、もうやめようかと迷った時期もあった。だが、斎藤繁監督が選手と監督をつなぐ「グラウンドマネジャー」という役割を与えてくれた。「青木は冷静にメンバーを見ている。選手に近い存在だからこそ青木にわかることが多く、いつも相談する」と斎藤監督は話す。

 夏の大会直前の激励会。佐藤琉星主将はこう呼びかけた。

 「試合に出られない人のために、サポートしてくれる人のために、青木のために、試合に勝とう」。その場にいた選手たちは涙をこらえた。

 迎えた初戦。佐藤主将は三塁打を放ち、守備ではダイビングキャッチを見せた。青木は「キャプテンが有言実行してくれた。本当にうれしかった」

 チームは3回戦に進出した。「本当にこれまで続けてきて良かった。チームが勝ち上がるところを最後まで見届けたい」(有元愛美子)

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