「悪夢」の緊急登板から心機一転、継続試合は好投 松商学園の栗原君

菅沼遼
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(13日、高校野球長野大会 長野日大6―3松商学園)

 試合後、一塁側ベンチの前に整列した松商学園のエース、栗原英豊(えいと)(3年)は涙を流すチームメートの傍らでぼうぜんとしていた。「気持ちの整理がつかない」。昨夏の決勝と同一カードとなった注目の試合は、大会史上初の「継続試合」の末、昨夏の覇者が初戦で姿を消した。

 前日は松商学園にとって悪夢のような一日だった。先発投手は制球が定まらず、3安打、2四球で1死しか奪えず継投。2番手は最初の打者のバント処理の際に三塁手と接触し、負傷降板した。

 思わぬ形で、背番号1の栗原が緊急登板することになった。

 春先に肩を痛め、春季大会には出場しなかった。昨秋以来となる公式戦で、スタミナに不安があったため先発は回避していた。「いきなりの登板になり、動揺があった」。相手の勢いを止められず、五回までにチームは6失点を喫した。

 その後、球場を覆った黒い雲から大粒の雨が降り、雷鳴もとどろいた。約20分の中断の末、2―6でリードを許した状況で継続試合が決まった。

 栗原にとって、高校生活最後の夏。満足いく投球ができないままには終われない。その夜、宿舎に戻るとシャドーピッチングなどをして本来のフォームを確認。「もう1回、一からだ」と、心をリセットした。

 一夜明け、13日午前10時に試合再開。栗原は140キロに迫る直球に変化球を織り交ぜ、長野日大打線に的を絞らせなかった。再開後は3回無失点。「今日は、満足いく投球ができた」。試合後、悔しさをこらえながらそう語った。

 1年の夏は新型コロナウイルスの感染拡大により大会がなくなった。2年では大会を制して甲子園のマウンドに立った。3年は初戦で敗退した。「いろいろあった3年間だった。人間的には、成長できたかなと思う」(菅沼遼)

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