栃木県内の10歳未満の女児が4月下旬、新型コロナウイルスに感染したことによる急性脳症で死亡した。治療した自治医科大(下野市)は、新型コロナによる急性脳症で10歳未満が死亡したのは国内初とみている。5月中旬には県内の5歳未満の女児も同様に急性脳症となり、体にまひが残った。小児科医でつくる日本小児神経学会は、全国の事例を調査し始めた。
県や自治医科大によると、2人とも基礎疾患はなかった。死亡した女児は陽性判明後、発熱などがあり自宅で療養していたところ容体が急変。自治医科大とちぎ子ども医療センターの集中治療室(ICU)で治療したが翌日死亡した。
急性脳症は、新型コロナに限らずウイルスなどに感染した体の免疫機能が過剰に働き、意識障害やけいれんなどが起きる。この女児は、年間10例程度しか報告されない「出血性ショック脳症症候群」だと診断された。
同センターの村松一洋准教授は、子どもが新型コロナウイルスに感染することは多いが死亡するケースは「極めてまれ」だとし、「新型コロナでついに急性脳症が出てしまった、という思いだ。意識がもうろうとしている、元気がない、会話が成り立たない、興奮しているなどの状況が続いたら急性脳症の発症が疑われる。医療機関を受診してほしい」と呼びかける。
ワクチン接種「5歳以上は検討を」
また、死亡した女児は新型コロナのワクチンが接種できる年齢に達していたが、未接種だったという。村松准教授は「5歳以上はワクチン接種を検討した方が望ましい」と強調する。
日本小児神経学会のメンバーで東京都医学総合研究所の佐久間啓研究員によると、国内で何らかのウイルスに感染して急性脳症になる18歳未満の子どもは、年間500~800人いるとみられる。死亡率は5%で、約35%には後遺症が残るという。
基礎疾患がない子どもが新型コロナに感染して急性脳症になった例は、栃木の2件以外にもあるとみられている。佐久間氏は、学会の調査でこうした子どもが全国でどれだけいるか把握し、事例を分析することで、新型コロナへの感染が急性脳症を引き起こすリスクを解明したいと話す。(中野渉)
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