1人の将棋の女流棋士が、11日の対局で現役生活にピリオドを打った。解説の聞き手などで人気がある安食総子(あじきふさこ)女流初段(48)。制度上、女流棋士の対局が事前に現役最後とわかっている状況で指されるのは珍しい。自ら「奇跡的だった」と語るプロ入りから24年。節目の一戦を終え、新たな一歩を踏み出した。
「今日が最後なんだな」
11日朝、安食女流初段は万感の思いで将棋盤の上の駒箱を開けた。
定刻の午前10時になり、一礼を交わした後に指された初手は▲7六歩。選んだ作戦は、長年愛用してきた振り飛車だった。
第2期女流順位戦(ヒューリック主催)のD級8回戦。昨年10月から指されてきたリーグの最終戦12局が、東京と大阪の将棋会館で一斉に指された。安食女流初段は東京で、昨年プロ入りしたばかりの大島綾華女流初段(19)と対戦した。
中盤までは互角の戦いだったが、判断ミスから攻め込まれてしまう。午後2時56分、96手で敗戦。現役生活を白星で締めくくることはできなかった。
感想戦を終えた安食女流初段の表情は、いつもと変わらず穏やかだった。
「最後まで対局できて、ホッとしています」
記事の後半では、プロを目指したきっかけや短期間で強くなれた理由などをご紹介します。
将棋界には女流タイトルが八…