不登校だった僕の居場所 未勝利の27歳が再び、リングに戻るまで

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伊藤雅哉
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 戦績6戦6敗のプロボクサーが、3年ぶりのリングに上がることになった。

 久しぶりにジムを訪ねたら、前より大人びた顔で迎えてくれた。

 「もちろん、勝ちたいです。でも、勝ち負けが全てかと言えば、それだけでもないんです」

 京都市のWOZ(ウォズ)ジム所属の山田定幸、27歳。4人きょうだいの長男だ。

 小学4年の頃から中学を卒業するまで、ほぼ不登校だった。

 学校に行けなくなったのは、同級生らにからかわれたのがきっかけだったという。

 いま、はきはきと受け答えする様子を見ていると、私は不思議な気持ちになる。

 この若者が家に引きこもり、人としゃべらない時代が本当にあったんだろうか、と。

 父が自宅の本棚に並べていたボクシング漫画「はじめの一歩」を手に取ったのは中学時代だ。いじめられっ子だった主人公の幕之内一歩に自分を重ね、読み進めた。

 17歳のとき、中学時代の担任の先生を訪ね、ボクシングを始めてみたいと相談した。いまのジムに連れていってもらった。

 学校では味わえなかった青春を取り戻すような日々が始まった。

 ジムの会費を払うために、ホテルのベッドメイキングのアルバイトを始めた。自宅からジムまでは自転車で片道約1時間。雨の日も、カッパを着てペダルをこいだ。

 最初は笑顔もなく、黙々と練…

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