多久の女山大根GI登録 国の地域ブランド保護 県内農産物で初
佐賀県多久市西多久町の特産品「女山(おんなやま)大根」が、農林水産省の「地理的表示(GI)保護制度」に登録された。全国では「夕張メロン」や「八女伝統本玉露」「大分かぼす」など有名な産品が登録されているが、県内の農産物では初めて。登録は6月29日付。
GI保護制度は、地域ならではの自然や社会、文化的環境のなかで、伝統的な生産方法で栽培されてきた農産物の名称を、その地域の知的財産として保護する仕組み。2015年に施行された地理的表示法に基づいて登録・運用され、今回の「女山大根」の登録で120産品となった。
生産者団体の「幡船(ばんせん)の里運営協議会」によると、女山大根は旧女山村(現多久市西多久町)を中心に、江戸時代から栽培されてきた在来種の赤首大根。ポリフェノールの一種、アントシアニンを含むため、根の半分以上が赤紫色。赤くなるのは表皮のみで、中身は白い。また、葉は赤のほか緑色のものもある。
8月中下旬に種をまき、12月から翌年2月末にかけて収穫する。一般の青首大根は0・4~1・5キロ程度で出荷されるが、女山大根は通常4~5キロで収穫。成長すると10キロを超す大物に育つこともある。大きくても肉質が緻密(ちみつ)で「す」が入りにくく、青首大根と比べて糖度が高い。やさしい甘さと特徴的な色合い、煮崩れしにくい肉質は、煮物や汁物、あえ物などの料理の具材として珍重されてきたという。
一時は青首大根と交雑し、昔ながらの女山大根ではなくなっていたが、地元にわずかに残っていた種をもとに県農業試験研究センターが約10年かけて交配、選別を繰り返し、元の姿に近いところまで復活させた。さらに地元の古老に聴いて種子を選別しながら、数年かけて現在の姿に戻したという。
GI登録手続きを受け持った運営協議会の事務局長、諸江啓二さん(67)は「料理研究家にレシピを考えてもらったり、試食会をしたりと、食べてもらうPRもずっと続けてきた。審査は厳しかったけど、GI登録は国が私たちに『頑張れ』と応援してくれたということ。これを機に、さらにステップアップして、攻めの姿勢で伝統野菜を守っていく」と話した。
一方、生産者でもある副会長の舩山真由美さん(63)は、「大きくて重いので、冬場の一番寒いときに畑から引き抜いて洗う作業が、それは大変。でも、若い世代の農家にこの伝統野菜を伝えていかなくてはと思うので、大変だけど頑張ります」と語った。(野上隆生)
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