レジェンドアナウンサーが実況中継 往年の名調子からあふれる球児愛

吉田啓、島田耕作
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 「トゥーアウト」「ティーム」。長年の高校野球ファンには懐かしい発音。高校野球や国際的なスポーツ大会の実況中継などで名をはせた「レジェンド」級のアナウンサーたちが今夏、全国高校野球選手権熊本大会を実況中継している。朝日新聞社と朝日放送(ABC)テレビの高校野球情報サイト「バーチャル高校野球」などで無料配信している。

 13日にリブワーク藤崎台球場(熊本市中央区)であった天草工―菊池戦。KAB(熊本朝日放送)による中継で、実況を担当したのは元NHKアナウンサーの小野塚康之さん(65)だ。テンポと歯切れが良く、強い抑揚を効果的に差し挟む名調子は、春夏の甲子園大会の実況中継が風物詩となっていた頃と変わらない。

 強肩でならす菊池の選手がマウンドにのぼると、解説者から「鉄砲肩」という言葉が出た。小野塚さんはすかさず「最近、あまり聞かない言葉で知らない方も多いと思います。『鉄砲肩』。皆さん覚えてください。野球にまつわる良い言葉です」と続けた。

 菊池は中盤までに5点をリードされ、投手交代が相次いだ。小野塚さんは重い空気をそのまま伝えることはせず、明るい口調で「投手というのは、こういう時でもマウンドにのぼるのがうれしいものですか」と、解説者に尋ねた。

 八回表で9点差をつけられコールド負け目前だった菊池はその裏、10点を奪う大逆転劇を見せて勝利。小野塚さんは「あー」「えー」とうなり、「本当に何があるか分からないということを、この試合が実現しました」と感嘆した。

 選手たちと野球への愛情あふれる実況を終えた小野塚さんに取材すると、こんな言葉が返ってきた。「野球はこんなに面白いんだよということを伝えたくて続けているんです」

 名刺の肩書は「実況家」。いまでも実況を担当する球場に到着すると、早くバックネット裏から球場の全景を見たくて駆け足になる。野球愛が高じて兵庫県西宮市の甲子園球場が見える場所に自宅を構えたという小野塚さんをしても、野球の楽しさ、面白さをまだ伝えきれていないという。「難しいから挑戦し続けている。野球にとらわれているのではと思うこともあります」。今夏の熊本大会は17日の試合まで担当する。

 KABの冨奥靖広制作部長によると、同社は以前から元TBSの林正浩さんや小野塚さんに夏の熊本大会の実況をしてもらっていた。新型コロナウイルスの影響でこの2年間は途切れていたが、「高校3年間、コロナ禍で苦しんできた球児たちのために、今年は『大御所』を招くことにした」という。

 さらに今年は1回戦から全試合を実況付きで配信するため、多くのアナウンサーが必要になり、熊本県内の他の民放を「卒業」したアナウンサーにも依頼。元RKK(熊本放送)の本田史郎さん、元TKU(テレビ熊本)の福田浩一さん、元KKT(熊本県民テレビ)の小川真人さんが快諾してくれ、レジェンドたちが実況に顔をそろえることになったという。KABでも、現在はマイクの前を離れた細谷英宣さんらが現場復帰して、実況に臨んでいる。

 冨奥部長は「それぞれに色があり、ベテランならではの味がでている。球児たちのプレーを大いに盛り上げ、優しい言葉でフォローし、心から高校野球を応援してくれているのが印象的です」と話す。

 「レジェンド」たちの実況を含む熊本大会の全試合は、「バーチャル高校野球」(https://vk.sportsbull.jp/koshien/別ウインドウで開きます)、KABが企画・制作する「KABめざせ!甲子園」特設ページ(https://www.kab-koshien.jp/別ウインドウで開きます)で見ることができる。(吉田啓、島田耕作)