夫は生きろと言った よみがえる悪夢の記憶、モルドバの村に漂う緊張

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コチェリ村=疋田多揚 キシナウ=疋田多揚 聞き手・疋田多揚
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 ウクライナが負ければ、ロシア軍が「転戦」してくるのではないか――。

 ウクライナ国境から約15キロ。モルドバ東部の村で、不安が高まっている。

 30年前、モルドバがロシア軍や親ロ派と戦った際の最前線だ。村は占領を免れたが、親ロ派は村はずれに「国境」を設定。今も武装ロシア兵が検問に立つ。

 「私の夫は当時の紛争で死んだのよ」

 夕暮れのジャガイモ畑で、バレンティーナ・アンドロンチャンさん(54)はそう話すと、石造りの平屋の自宅から、戦死者名簿を持ってきた。全263ページ。夫ペトゥルさんの遺影が載った89ページを見つめ、当時のことを語り始めた。

再び緊張にさらされた村

 「欧州の最貧国」とも呼ばれる旧ソ連構成国のモルドバ。人口約300万人のこの国が内戦状態に陥ったのは1991年末。国を南北に流れるドニエストル川の東側で、親ロ派住民が前年に独立宣言。「本国」との武力衝突に発展した。

 バレンティーナさんが暮らすコチェリ村は東岸で、背後の川幅は約1キロ。ペトゥルさんら約700人の村民が志願兵として親ロ派やロシア軍と戦った。

 92年春、夫は告げた。「家族は生き残るべきだ」

 早朝、ペトゥルさんに付き添…

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