カトウ名乗る男の還付金案内に「なんか変」 でも80代は郵便局へ
市や区の職員などをかたり、医療費や保険料の還付が受けられるなどと偽って、ATMで現金を振り込ませる「還付金詐欺」の被害が急増している。神奈川県内で今年1~6月に確認された被害件数は前年同期の約2倍で、被害額も約2億3千万円増えている。
横浜市鶴見区に住む80代の女性宅の固定電話が鳴ったのは6月8日の昼ごろだった。受話器を取ると「カトウ」と名乗る若い声の男が「自分は区の保険課の職員です。医療費2万3千円の還付金が受けられます」と丁寧な口調で話した。
女性は還付金詐欺のことを知っていて「なんか変だ」と感じた。しかし、冬に凍った雪に足を滑らせ骨折し、1カ月半ほど入院していた。病院では医療費控除について聞かされていて「病院で聞いた話と思ってしまった」という。
男から30分以内に郵便局へ行くよう指示され「ATMに着いたらコールセンターに電話を」と、東京の市外局番「03」で始まる電話番号を伝えられた。
通帳とキャッシュカード、印鑑を持ち、10分ほど歩いて郵便局に到着。窓口で状況を説明すると「それは詐欺です。還付金が出るという電話がかかってくることはない」と、郵便局員から告げられた。
女性は昨年7月に夫を亡くし、一人暮らしをしていた。骨折もあり、詐欺を疑うも、不幸の連続に冷静さを失っていたと振り返る。
県警幹部によると、「だまされない自信があった」と話す被害者も多いという。「犯人は役所職員の話し方を研究し、高齢者の心理につけこんでくる。100回に1回だませればいいという感覚で何度も電話する」と詐欺グループの特徴を説明した。
県警によると、1~6月の還付金詐欺の被害は280件(前年同期139件)、被害額は約3億7700万円(同約1億4600万円)に上る。県警は、「ATMでの医療費などの払い戻しはできません。ATMで通話はしないで」と注意を呼びかけている。(中村英一郎)
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