覆面芸術家バンクシーのホテル、コロナ禍で気づいた観光の本当の意味

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ベツレヘム=高久潤
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 世界的なアーティストが手がけ、オープンが国際的なニュースとなったホテルが、コロナ禍での休業をようやく終えて再開したらしい。日本でもまだマスクは欠かせない生活ではありながら、海外からの観光客の受け入れが再開されました。人の動きが止まってしまうと、社会に何が起きるのでしょうか。

 まず思いつくのは、経済活動の停滞。世界的な感染症も、戦争も、生活の経済的な基盤を揺さぶります。でも、それに加えて「気づきにくい変化、気づけていない変化がある」とその中東のホテルの支配人は教えてくれました。いわく、「世界の見え方に関わること」だと。どういうことなのでしょうか。

 そのホテルは、中東の聖都エルサレムから車で約20分の場所にあります。「ウォールド・オフ・ホテル」。メッセージ性の高いストリートアートで知られる英国の覆面芸術家バンクシーがプロデュースして2017年に開業。当時、「壁へようこそ 芸術家バンクシーがベツレヘムでホテルを開業」(ロイター)、「バンクシー、『世界一眺めの悪い』ベツレヘムのホテルに足跡を残す」(BBC)などと世界的に報じられました。

「世界一眺めの悪い」ホテルがつくられたワケ

 理由はその場所とホテルに込められたメッセージにあります。ホテルがあるのは、キリスト誕生の地ベツレヘム。イスラエルが占領するパレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区にあり、住んでいる人たちの多くはイスラム教徒です。

 ベルボーイのような猿のオブジェが迎えてくれるドアから一歩踏み入れ、客室に行くと、確かに「眺めが悪い」。窓から見えるのは、イスラエルが「テロ」防止のために建設した分離壁です。

 ホテル側から分離壁を見ると、英語やアラビア語のメッセージ、色とりどりの絵が一面に描かれています。占領への反発や、自由への思いがさまざまな形でつづられ、何重にも塗り重ねられていました。

 ただ、気になったことも。国際ニュースとして話題になったころの写真と比べると、「落書き」が古く見える。つまり最近のものにはあまり見えなかったのです。

 コロナ禍からロシアによるウクライナへの軍事侵攻へ。世界の関心が大きく変わるいま、この地にどんな変化が起きているのか。迎えてくれたホテルの支配人ウィサム・サルサさん(47)に聞きました。

パレスチナ=テロ」のバイアス

 ――17年に開業しました。国際的に人気が高いバンクシーによるホテルということで話題を呼びましたが、そもそもどういう意味があるホテルなのでしょうか。

 まず何よりも、私たちパレス…

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