大会注目の左腕、手負いで執念の投球 鹿児島城西の津波投手

仙崎信一
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 〈17日、高校野球鹿児島大会準々決勝、鹿屋中央7―4鹿児島城西〉

 球が高く、ボールが先行する。明らかに調子が上がらない。大会注目の左のサイドスロー、鹿児島城西の津波(つは)辰弥投手(3年)は手傷を負っていた。

 3回戦翌日の練習中、打球が足を直撃した。「返球を受けようとした時だったので、よけられなかった」。左足甲付近を痛めた。

 痛み止めを飲んだが、軸足が定まらない。制球が持ち味だけに厳しいマウンドになった。

 3回戦で逆転サヨナラ勝ちをして勢いに乗る鹿屋中央は見逃してくれない。初回に先制され、四回にも追加点を奪われた。ボールが先行し、浮いた球を打たれる悪い流れ。五回までに許した安打は8本。完全にペースを握られた。

 NHK旗2連覇に貢献した力のある投手。五回に味方の初安打が長打になって2―2に追い付くと「気持ちを切り替えてマウンドに向かった」。それからは「らしさ」が戻った。ストライク先行の投球で、流れを引き寄せたかにみえた。

 同点のまま迎えた最終回。2死から連打を浴びると申告敬遠で満塁となり、5番打者との勝負。追い込んだ有利なカウントから外への直球が甘く入り、走者一掃の長打を浴びた。

 沖縄の名護市出身。先輩を頼りに、當間琉斗選手(3年)とやって来た。先輩が選抜大会の切符を手にした1年の時は、夏の甲子園交流試合をスタンドで観戦。2年の時にNHK旗で優勝。夏は3回戦止まりだったが、秋の県大会準優勝、今年のNHK旗2連覇と甲子園に向けて着実に歩を進めたはずだった。

 被安打14、失点7。第2シードで迎えた夏はベスト8で敗退した。「甲子園に行く難しさを感じた。この仲間と甲子園に行きたかった……」。136球。執念の投球を見せた左腕エースは悔しさをかみしめた。(仙崎信一)

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