第106回「ウクライナに残る」涙と覚悟のドライ・ボルシチ でも届けた兵士は

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ウクライナ西部リビウ=森岡みづほ
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 過酷な前線でロシア軍と戦う兵士たちに、せめておいしい食事を届けたい――。市民たちは困難な状況に直面しながらも、終わりが見えない戦いを支えようとしている。

 ウクライナ西部リビウにある診療所。11日に記者が訪れると、小さな一室に小型乾燥機が並べられ、ビーツやニンジン、ジャガイモが乾かされていた。

 10分の1ほどの重さになった野菜を、女性たちが袋に詰めていく。ローズマリー、パセリ、ディルといったハーブや調味料を入れたら、「ドライ・ボルシチ」のできあがりだ。

 ボルシチは、ウクライナ発祥とされる煮込みスープで、家庭や地域の暮らしに欠かせない、ウクライナ人のソウルフードと言ってもいい存在だ。ドライ・ボルシチはいわばそのインスタント版だ。

 作り方は簡単で、4~5リットルのお湯を沸かした鍋に入れて、缶詰の肉などと30分煮込むだけ。一袋で10人分あり、賞味期間は約1年間と保存も利く。

 「もちろんノンケミカル(化学調味料不使用)です」と、考案した医師のナタリア・ディアドゥスカさん(42)は話す。

 ナタリアさんは小児科医で、この診療所などを経営する医療機関に勤めている。夫と2人の娘とリビウ市内に住む。

 2月24日、ロシア軍のウクライナ侵攻が始まった。ウクライナでは成人男性は基本的に国内にとどまらなくてはならない。ナタリアさんは夫を残して、娘と国外に避難することを決めた。

夫に見送られ国外へ…、芽生えた強烈な思い

 翌日、夫が国境まで送ってく…

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