認知症になると預貯金がおろせなくなる? 財産「凍結」への備えは

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編集委員・清川卓史
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 認知症になると、預貯金が引き出せなくなる――。そんな話を聞いたことがあるかも知れません。認知症による財産の「凍結」とも呼ばれています。なぜ「凍結」されるのか、防ぐにはどんな対策があるのか。専門家に聞きました。

 財産の「凍結」とはなにか。

 一般には、高齢者が保有する預貯金や不動産が、認知症による判断能力の低下によって、活用できなくなることを言う。

 高齢者の財産「凍結」が社会的課題となっているのは、認知症の人が急増しているからだ。国が示す推計によれば、65歳以上の認知症の人は2025年には高齢者の約5人に1人となる。

認知症の高齢者、保有資産255兆円の推計も

 認知症高齢者が保有する資産額について、三井住友信託銀行が推計を公表している。それによれば2020年時点で金融資産が約175兆円、不動産(住宅と土地)が約80兆円、資産総額は約255兆円。これは全家計が保有する資産の約8%にあたる。さらに40年には資産総額は約349兆円に増え、全家計保有額の約12%を占めるという。

 もし、巨額の資産が「凍結」によって消費や投資にまわらなくなれば、「経済停滞の一因となりかねない」と同行はリポートで指摘している。

 そもそも認知症になるとなぜ財産が「凍結」されるのか。

 「民法に、意思能力がない者がした法律行為は無効となる、という規定があります」

 そう教えてくれたのは、司法書士の元木翼さん。「親の財産を凍結から守る 認知症対策ガイドブック」を出版した専門家だ。

 認知症が進んで判断能力が低下すると、民法が言う意思能力がないとみなされ、預貯金引き出し、不動産売却といった法律行為ができなくなる。これが「凍結」だ。認知症に限らず、他の病気や事故で判断能力が低下しても、同じことが起きるという。

 注意が必要なのは、認知症の診断が出たからといって、財産が一律に「凍結」されるわけではない、ということだ。あくまで、個別の行為についての判断能力が問われることになる、という。

 金融機関であれば、キャッシュカード紛失などの様々なきっかけで、顧客の判断能力の低下を把握する。では「凍結」するかどうかは、だれが決めるのか。

 元木さんは「第三者機関が判定してくれるわけではありません。その法律行為に関わる人、つまり預貯金引き出しであれば金融機関の担当者が判断しているのが現状です」と話す。そのため同じ高齢者でも、金融機関によって「凍結」の判断がわかれる例もあるという。

 いったん財産が「凍結」されてしまうと、原則として、成年後見制度の利用を家庭裁判所に申し立て、選ばれた後見人に代理で取引してもらう以外の対応は難しくなる。

 全国銀行協会は21年2月、判断能力が低下した高齢顧客の家族からの預貯金の引き出し依頼について、「(医療費など)本人の利益に適合することが明らかである場合に限り、依頼に応じることが考えられる」との指針を示した。ただし「極めて限定的な対応」とされ、成年後見制度の利用を求めることが基本という見解だ。

 高齢者の判断能力低下への備えとしてなにができるのか。元木さんが「基本はこの二つ」と挙げるのが、「任意後見制度」と「家族信託」だ。

 任意後見制度は、本人に十分…

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