兄の悔しさ、3年生になって分かった 上尾・中村君の心境変えた練習
高校野球の地方大会に出場している3年生たちは、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた。
全国選手権大会が中止された2020年に入学。外出自粛を余儀なくされ、入学式が行われなかったり、同級生や先生と対面できなかったりした。入学後も緊急事態宣言やまん延防止等重点措置で休校や分散登校、部活動の制限など影響を受け続けてきた。
限られた練習時間の中、選手たちは様々な思いを抱えながら、大会に向けて努力を重ねてきた。
上尾(埼玉)の3年生・中村峰(たかね)には、忘れられない言葉がある。
「なんのために、ここまで野球やってきたんだろう……」
20年夏。選手権大会の中止を知らせるニュースをテレビで見ながら、同じ上尾でプレーしていた二つ上の兄・颯(はやて)さんは一言だけ、誰に言うわけでもなく、ぼそっとつぶやいた。
当時1年生だった中村には、その言葉の意味がよく分からなかった。「当時は『しょうがないか』くらいにしか思わなかった。代替大会もあったので」
でも、一生懸命練習すればするほど、だんだんと兄の言葉の受け止め方が変わってきた。3年間必死に野球をやって、今では当時の兄の思いに自分を重ねることができるようになった。
「兄貴の分も、一生懸命な姿を見せる」。この夏、スタンドで見守る颯さんに向かって、そう誓った。
18日の4回戦でチームは敗れたが、颯さんの分もこの夏をレギュラーで戦い続けた。試合後、中村はこう思いを語った。
「兄貴がいなかったら、上尾には来ていなかったかもしれない。ありがとう」
兄には「やりきった」と伝えたいという。(仙道洸)