「破産」したスリランカ、最も利益を得たのはだれか 影響力競う大国

有料記事

聞き手・牧野愛博
[PR]

 経済危機が続くスリランカのゴタバヤ・ラジャパクサ大統領が辞任に追い込まれました。「インド洋の真珠」と呼ばれるスリランカを巡っては、地域の大国が影響力を競ってきました。今回の事態で利益を得たのは誰なのか。南アジアの安全保障に詳しい防衛省防衛研究所の伊豆山真理・理論研究部長に聞きました。

 ――スリランカの危機を巡り、米国やロシアも支援の動きを見せています。

 ロシアにはスリランカを支援する余裕はなく、スリランカを巡る動きはインドと中国による影響力の競い合いと言えると思います。スリランカは、伝統的にインドの勢力圏にありましたが、中国が過去10年ほどの間に急速に影響力を強めています。

 スリランカでは人口の約73%を占める多数派シンハラ人と、人口の約18%を占める少数派のタミル人の対立が長く続いてきました。シンハラ人のほとんどは仏教徒で、タミル人はヒンドゥー教徒とイスラム教徒がほとんどです。

 スリランカではタミル人の独立を主張する武装闘争組織「タミル・イーラム解放の虎(LTTE)」と政府の間で長らく内戦状態が続いていました。ゴタバヤ・ラジャパクサ氏の実兄で2005年に大統領に就いたマヒンダ・ラジャパクサ氏は、国際社会の仲介努力に背を向けて停戦合意を破棄し、09年にLTTEの武力鎮圧に成功しました。

 この過程で、スリランカ政府軍の軍事作戦に伴う人権侵害を批判され、国際社会から孤立しました。米国も軍事援助を停止し、代わりに中国がスリランカに支援の手を差し伸べました。07年のマヒンダ・ラジャパクサ大統領の訪中を境に、中国からの軍事援助が拡大し、スリランカのハンバントタ港の開発も合意されました。

中国とインドの影響力競争の実態は

 スリランカへの直接投資額でみた場合、07年から11年までの5年間はインドの5億ドルに対し、中国は7千万ドルに過ぎませんでした。しかし、12年から16年までの5年間ではインドの4・4億ドルに対して、中国は10・3億ドルに急伸しました。インドがスリランカと合意した開発プロジェクトがキャンセルされ、中国が代わりにその契約を締結するケースも相次ぎました。

 ――中国のスリランカへの進出は、安全保障にどのような影響を与えるのでしょうか。

 インドの海軍関係者は比較的…

この記事は有料記事です。残り2332文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません