中国の反日デモから10年 破壊された百貨店の社長を癒やしたのは

有料記事

聞き手 編集委員・吉岡桂子
[PR]

 「日中国交正常化」から今秋で50周年を迎える。両国関係の悪化でお祝いムードは盛り上がらない。思い返せば、40周年の2012年秋には、中国のあちこちで反日デモの嵐が吹き荒れていた。手塩にかけて育てた店を壊され、焼かれた平和堂(中国)の当時の社長、寿谷正潔(すたにまさゆき)さんはいま、何を思うのか。

リレーおぴにおん 「痛みはどこから」

すたに・まさゆき

1953年生まれ。総合スーパー平和堂(本社・滋賀県彦根市)の中国法人(湖南省長沙市)で社長を務めた。2020年まで約25年間駐在。

 「ここまで壊すのか、と。怒り、悔しさ、落胆。もう再開できないかもしれないという不安――。それらがない交ぜになった、10年前のあの日の心の痛みは忘れられません」

 2012年9月15日。暴徒化した反日デモ隊が、中国南部の湖南省長沙市で展開していた三つの店を襲った。店に押し入り、売り場を荒らし、店の前の資材には火がつけられた。日本が尖閣諸島を国有化したことに対する抗議を理由に、全国にデモが広がっていた。

 ――予兆はありましたか。

 「9月18日が近くなって、反日感情の高まりを感じていました。1931年9月18日は、満州事変の引き金をひいた柳条湖事件の日です。遼寧省瀋陽近郊で線路の爆発が起きました。日本が中国との戦争に突き進むきっかけとなった日です。この日は例年、中国社会において歴史を振り返り、反日感情が呼び起こされます。日本企業は、店の開業や大きなイベントなど多くの人が集まる行事はすべきではない、と注意しています」

ネットで呼びかけられたデモ

 「この年は中国各地で反日デ…

この記事は有料記事です。残り2363文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

  • commentatorHeader
    安田峰俊
    (ルポライター)
    2022年7月24日7時37分 投稿
    【解説】

    平和堂は滋賀県彦根市に本社を置き、157店舗のうち80店舗近くが滋賀県、他県についても北陸・中京・京阪神のみというドミナント戦略をとるスーパーマーケットのチェーンです。 一方、中国でも日系企業がごくわずかな内陸部の湖南省だけで展開。つ