香ばしい煙が漂ってくる夏が来た。記者の自宅近くの鮮魚店の店先でも、ウナギが豪快に焼かれる日が近い。毎年、近所の人たちも「今年は白焼きがいい」「大きくてやわらかそう」と集まってくる。
でも、このウナギ、どこ産なのだろう?
養殖されたものなんだろうな。
いや、そもそも、ウナギは絶滅危惧種ではなかったか。
ふっくらした甘い味わいのウナギのかば焼きを食べる前に、ちょっと立ち止まって考えてみたい。
小売り大手イオンが今夏のウナギ商戦に向けて、取材会を開くと聞き、都内の「イオンスタイル品川シーサイド」を訪れたのは、土用の丑(うし)の日のちょうど1カ月前の6月23日だった。
「『ウナギ取り扱い方針』のなかで掲げた“持続可能な調達”の目標を1年前倒しで達成しました」
イオンの担当者、松本金蔵・イオンリテール水産商品部長はこう強調した。イオンの取り組みは、ウナギの取扱量では国内最大級となる流通大手の試みとして業界内で注目されてきた。
イオンの取り組みを理解するには、同社が扱うニホンウナギについて知る必要がある。
2千キロを旅するニホンウナギの稚魚
ニホンウナギは、日本から約2千キロ離れたマリアナ諸島付近の海域で産卵し、稚魚が日本のほか台湾、韓国、中国の川に上ってきて育つ。イオンは他種のウナギ養殖にも取り組んできたが、採算が取れずに撤退。この夏は、ニホンウナギだけを売り場に並べるという。
今年の「土用の丑の日」は7月23日と8月4日。この日に特に好んで食べられるニホンウナギは、絶滅が危惧される魚でもあります。ウナギの未来について考える連載の初回は、すべてのウナギの元になる天然稚魚の産地をめぐる問題を探ります。
ニホンウナギは2013年に…