初夏の斜面に広がる紫やピンクの花畑――。最近、国内の山中でそんな風景が目立つようになっている。スズランのように花を房状に咲かせる美しい植物だが、日本の野外には自生していないはずのジギタリスだ。欧州原産の園芸品種で毒草としても知られる。環境省が注意を呼びかける外来種リストには載っておらず、今も流通・販売が続いている。
横浜市のフォトグラファー河野隆行さん(63)は2021年、別の外来植物の情報を集める中で、ジギタリスが野外で自生していることを知った。
気になってニュースや山岳系の投稿サイト、個人のブログなどを調べると、06年以降に34道府県で自生している記録が確認できた。撮影スポットになっている場所もあった。持ち込みの時期や経緯は分からないものが多かった。自身の目でも、栃木県内などで自生しているのを確かめた。
「たまたまジギタリスは目立つから気づかれただけで、こういう例はほかにもあるのかもしれない」と河野さん。自生している情報を見つけたら、地元の自治体や博物館に提供しているという。
ジギタリスは欧州原産の多年草で、大きくなると高さ1メートルを超える。花の形からキツネノテブクロとも呼ばれ、主に観賞用だ。ジギトキシンなどの毒を持ち、食べると嘔吐(おうと)やめまいを起こし、死に至る場合もある。元々は里山の庭先に植えられていたものが野生化したり、その種が人に付着して運ばれたりして、広がったとみられる。
心配されているのが生態系へ…