あの日 原爆が断ち切った日常  「個人」の物語として書く理由は

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聞き手・畑山敦子
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 広島市在住で戦争や核を題材に作品を書いてきた、児童文学作家の中澤晶子さんが、「ひろしまの満月」(絵・ささめやゆき、小峰書店、税込み1320円)を6月に発表しました。被爆者らからの証言などを踏まえ、「8月6日」を境に、ひとつの家族の日常が、どのように壊されていったのか、「今」とどうつながっているのかを描いています。現代の子どもたちに向けて書きたかったことを聞きました。

被爆当時の思い出を、亀が語る

 ――物語は、現代に暮らす少女に、長生きの亀が胸にしまっていた1945年8月の思い出を語っています

 主に小学校低学年の子どもたちに向け、過去と現在の間に横たわる時間を自然に感じてもらえるよう、長生きで親しみやすい動物を主人公にしたいと思いました。広島平和記念資料館のあるあたりはかつて大きなお寺があり、そこに池があり、実際、たくさんの亀がいたという話を聞いたことがありました。一般的に長生きの動物として知られる亀が、被爆後の歳月を生き抜き、今を生きる女の子に出会う設定を考えました。

 原爆が投下された8月6日の朝、現在の平和記念公園周辺では、学徒動員の生徒たちが空襲による延焼防止のため建物を解体する「建物疎開」の後片付けの作業に当たっていました。作業中、原爆が投下され、大勢が命と未来を失ったのです。以前、動員されていた旧制広島二中の生存者にお話をうかがい、物語に登場する中学生の「みのるくん」のイメージもそこから生まれました。

77年前と今の子どもたちをつなぐ唯一のもの

 ――妹思いのみのるくんや母…

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