子どもの習い事、させないとかわいそう? 本田由紀さんの答えは
子どもを東大に入れたいわけではない。スポーツ選手にしたいわけでもない。好きなことをさせ、小さな自信をつけさせてやりたい。それだけだったのに、いつの間にか習い事の数が増え、余裕を失っている――。なぜ親は習い事へと駆り立てられるのでしょうか。教育社会学者の本田由紀・東大教授に聞きました。
ほんだ・ゆき
1964年生まれ。東京大学教授。著書に「『家庭教育』の隘路(あいろ)」「教育は何を評価してきたのか」など。
――他の子が何か習い事をしているという話を聞くと、うちもやらせた方がいいのかな、と焦ってしまいます。
「日本では学校教育への公的支出が少なく、1学級あたりの人数も多いため、学校での教育は手薄にならざるを得ない状況が続いています。親の責任と金で学校外教育をしなければ子どもがちゃんと育たない、勉強だけでない様々な『能力』を家庭で育てなければならない……。そんな圧力が、政府やメディアを通じて家庭に降り注いでいます」
「教育産業も、少子化で市場が縮小している中で親の不安につけこみ、新しい習い事を次々と売り込んできます。『これからは英語が大事』『長期休暇にはこれを』……と。その結果、小学生の習い事の経験率は、30年前に比べておよそ倍になりました」
――そんなに増えているのですね。
「ただ、広がり方にはむらがあります。親の収入や地域による格差があるのです。経済的に厳しい家庭や、大都市と違って教育産業があまりない地域では、させてやりたくてもさせられません。コロナ禍でお母さんがパートの仕事を失い、習い事の数を減らしたという家庭もありました」
――習い事格差は、子どもの将来にどのように影響するのでしょうか。
本田さんが自分の子に習い事をさせた時の経験や、子どもの自己肯定感の育み方について語ります。
習い事が生む格差
「習い事をすると、進学や就…
- 【視点】
習い事と「成功」の因果関係を推定するのはむずかしい。 「所得の高い世帯の子どもは、習い事がする率が高く、進学や就職で『成功』しやすい傾向がある」という調査結果があったとする。しかし、「所得」「習い事」「成功」の三つの因果関係は、本当の
- 【視点】
学校の部活動も同じような困難のなかに置かれています。記事中に「『好きなことをさせたい』という平凡な願いから習い事を始めさせる」とあるように、部活動もまた、個々の子供や保護者、指導者(教員)においてそのような意図にすぎないものです。あるいは、