ほぼうなぎ、値段も本物? 焼き、タレ、皮目、こだわりに込めた思い
23日は土用の丑(うし)の日。
このときばかりは元気をつけようとウナギを買い求める人は多い。しかし、そのハードルとなるのがお値段の高さだろう。
食品会社「カネテツデリカフーズ」(神戸市東灘区)が手がける「ほぼうなぎ」は、魚のすり身を使って本物のウナギのような味、食感、見た目を再現した“フェイク”かまぼこだ。
公式通販サイトで売り出したが、今夏分は土用の丑(うし)の日を待たず、すでに売り切れた。
お手頃価格でウナギを食べた気分が味わえるから人気――と思いきや、産地や大きさによっては本物より高価という。
なぜだろう?
ほぼうなぎは、1パック2枚入りで約140グラム。通販では3パック2980円(税込み・送料無料)で売り出された。
今年は、ほぼうなぎにパン粉をつけて揚げた「ほぼうなぎカツ」も新発売した。
「中国などの海外産ウナギの方が安いかもしれないことは最初から分かっていた」
そう話すのは宮本裕志・開発部長(50)だ。「手間がかかりすぎまして」
ほぼうなぎは、魚のすり身を成型して一度蒸した後、わざわざ静岡県内のウナギかば焼き工場に持ち込んで、本物のかば焼きと同じタレをつけて焼いている。
本物のかば焼きの倍以上の工程と手間がかかっているため、コストがかかる。
そもそも、原料であるハモやタラなど、魚の値段も上がっているという。
同社が、ほぼうなぎに込めた願いはサステイナビリティー(持続可能性)だ。
絶滅危惧種であるウナギ。国内で消費されるほとんどが養殖物だが、育てられる稚魚(シラスウナギ)の流通量は不安定だ。
「そこで、ウナギにはちょっと休んでもらって、資源量が増えるまでの間は『ほぼ』を食べてという狙い」と宮本さん。
ほぼうなぎは2018年に誕生したが、年々改良されている。
「もう、かまぼこと言われないように皮の部分にはこだわりました」と開発チームの井口静夏さん(45)は力を込める。
身の部分はふっくらと厚みがあり、口どけと柔らかさにこだわったという。そして、裏の皮の部分は関西風の腹開きを表現した皮目の違いをリアルに再現した。
井口さんは「ウナギ独特の泥臭さや小骨が苦手だという人も心配せず食べられる。そういう意味でも、ほぼうなぎという商品を出す意味はあると思います」。
今は購入者の評価が気になっている。(金子智彦)
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