浦和学院の芳野、完封逃し勝っても涙 他投手の負担減らしたかった

山口裕起
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 (23日、高校野球埼玉大会準々決勝 浦和学院6―1浦和実)

 浦和学院の背番号11、3年生左腕の芳野大輝(3年)は空回りしてしまった。

 気合が入りすぎた。

「絶対に抑えてやろうと、力んじゃいました」

 初戦となった2回戦以来の先発マウンド。立ち上がりから、全力で腕を振ったが、球は荒れた。一回に3四球を与え、二回も2安打を許す。ピンチの連続だ。

 だが、いずれも味方の好守に助けられ、無失点で切り抜けると、気づく。「バックを信頼して気楽に投げよう」。冷静さを取り戻した。

 三回以降は、最速140キロの直球とスライダーを低めに集め、テンポよく抑えていく。守りから生まれたリズムは、攻撃にもつながった。

 四回2死一、三塁での打席で左中間へ先制の2点二塁打を放った。自分自身を援護し、「さらに乗っていけました」。

 九回も球威は衰えず、2死を奪い、公式戦初完封まであとアウト一つまでこぎ着けた。走者は一、二塁。しかし、ここで中前に適時打を浴び、降板した。

 救援した投手がその後のピンチを切り抜けたが、喜ぶ仲間を尻目に芳野は悔し涙を浮かべた。

 「高校生活で一番の投球だった。でも、完封したかったから、自己採点は90点です」

 同学年で同じ左腕のエース宮城誇南(こなん)に負けじと、練習してきた。今春の選抜大会でチームは4強入りしたが、自身は準決勝に2番手で登板し、与四死球3。1イニング持たずに降板した。

 「宮城に頼りきって負担をかけてしまった。僕の中での選抜は悔しい思いしかない」

 夏に向けて、毎日タオルを握って、鏡の前でシャドーピッチングを繰り返しフォームを固めた。

 この日、一人で投げきりたかったのは、24日の準決勝、26日の決勝に向けて宮城や他の投手の負担を減らしたい、との思いが強かったからだ。

 甲子園は選抜の雪辱を果たす場所ととらえるが、もう一つ目標がある。

 選抜王者、大阪桐蔭で主将を務める星子天真とは中学時代、熊本のボーイズリーグでチームメートだった。

 「甲子園で戦おう」。そう誓い合って、2人は熊本を出てきたという。

 芳野は言う。

 「あいつに先に甲子園で優勝された。最後の夏は大阪桐蔭を倒して日本一になりたい」

 その舞台まで、あと2勝。負けられない。(山口裕起)

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