学生コーチから再び選手に、決意固めさせた本塁打 関学大付・小林君

吉村駿
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 23日、高校野球群馬大会準々決勝、桐生第一15―9関東学園大付

 3点を追う七回、2死満塁。関東学園大付の代打・小林優太(3年)が打席に立った。

 一打同点のしびれる場面。4球目の高めの直球に手が出てしまい、空振り三振に倒れた。「任せてもらってうれしかったからこそ、一本出したかった」

 実は高校に入ってすぐのころ、野球が嫌いだった。

 午後10時まで自主練習をしたが、試合では全く結果が出ない。「努力しても結果は変わらない。そんな野球が嫌になっていった」

 母の由佳さんや羽鳥達郎監督に相談。1年生の冬から学生コーチになった。

 仲間にノックを打ったり、打撃練習の動画を撮ったりする日々。少しずつ選手に戻りたくなった。

 でも、自分で選んだ学生コーチ。「やっぱり選手に戻りたい」とは言えなかった。「仲間のために尽くす」と自分に言い聞かせ続けた。

 昨年末、野球部のOB戦があった。小林は羽鳥監督から打席に立つ機会をもらった。「学生コーチの自分が打っていいのか」。遠慮がちにバットを振ったつもりが、本塁打になった。仲間は公式戦かのように大喜び。気持ち良くて「もう一度選手に戻る」と決めた。

 そんな小林を仲間や監督は快く受け入れてくれた。「わがままな自分を許してくれたから、結果で応えたくて」。毎日朝5時台の始発で登校して、打撃練習を重ねた。最後の夏は背番号12でベンチ入り。ここぞの場面で代打も任せられた。

 迎えた準々決勝。強豪・桐生第一と壮絶な打ち合いになった。点が入る度に仲間とハイタッチで喜び、敗れると目に涙が浮かんできた。

 「打てなくても仲間と一緒に喜んで、最後はみんなで泣いて。野球をやっていたからこんな経験ができた。今は野球が大好き」(吉村駿)

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