【そもそも解説】NPT再検討会議ってなに?

核といのちを考える

福冨旅史
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 ロシアがウクライナに侵攻し、核兵器が使われるかもしれないという状況が続いています。核兵器の数を減らす「核軍縮」をめぐっては半世紀以上にわたり、核不拡散条約(NPT)が中心的な役割を担ってきました。NPTで決められていることがきちんと進められているかを話し合うNPT再検討会議が8月1日から、米ニューヨークの国連本部で開かれています。26日に閉幕する予定です。

 日本からは、岸田文雄首相が首相として初めて参加しました。NPTとはどんな条約で、再検討会議では何が話し合われているのでしょうか。ウクライナをめぐる事態に影響を与えるのでしょうか。ポイントをまとめました。

「核」をめぐる枠組み、国連のほぼ全加盟国が参加

 Q NPTとは?

 A 1970年に発効した条約です。その時点で核兵器を持っていた米国、ソ連(現・ロシア)、英国、フランス、中国の5カ国に核兵器を持つことを認める代わり、核軍縮の交渉に誠実に取り組むよう義務づけました。

 一方、他の締約国には核兵器をつくることや取得することを禁じています。これは「核不拡散」と呼ばれます。さらに、原子力発電所などの「原子力の平和利用」を認めています。核軍縮、核不拡散、原子力の平和利用がNPTの3本柱です。

 締約国は国連の全加盟国に近い191カ国・地域にのぼります。

 ただ、北朝鮮は2003年にNPTからの脱退を一方的に宣言し、その後、核実験を繰り返しました。

 インドやパキスタンイスラエルはNPTに入らないまま、核兵器を独自に持ったとみられています。

 Q NPTはなぜできたの?

 A NPTが成立する前の1960年代、世界は米国とソ連が激しく対立する「冷戦」の最中でした。当初は米ソ両国だけが独占していた核兵器を、英国、フランス、中国も保有するようになり、さらに核兵器を持つ国が増えていくことが心配されるようになりました。米国とソ連が核戦争の瀬戸際までいった62年のキューバ危機を経て、核兵器を持つ国をこれ以上増やさないようにするため、NPTがつくられました。

 Q 再検討会議とは?

 A 締約国の代表者らが参加します。NPTで核兵器を持つことが認められている米国、ロシア、英国、フランス、中国の5カ国がきちんと核軍縮を進めているかどうかや、核兵器を持たない国が核兵器を持つことを防ぐ手立てが機能しているかなどをチェックします。

 条約にはもともと25年間という期限がありましたが、95年に無期限で延長され、それ以降は5年おきに再検討会議を開いてきました。10回目となる今回は当初、2020年春に予定されていたもので、新型コロナウイルスの影響で4度延期されていました。

 

最終文書採択 ウクライナ問題で予断許さず

 Q 会議では何をめざすの?

 A 今後の目標や、行動計画を示す最終文書の採択をめざします。00年の再検討会議では、核兵器を持つ国が核兵器を廃絶するという「明確な約束」が記された最終文書をまとめました。10年の再検討会議では64項目にわたる具体的な行動計画が示され、この「明確な約束」を再確認しました。

 ところが、前回15年の再検討会議は、中東に「非核地帯」を設けるという構想をめぐって、核兵器を持つ国と持たない国の対立が解消できず、最終文書を採択できませんでした。

 今年2月、ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領が「我々は最強の核大国の一つ」と述べ、核兵器の使用をちらつかせました。NPTに基づく国際秩序は危機に直面しています。

 7年3カ月ぶりに開かれる今回の再検討会議で、最終文書をまとめ、核兵器廃絶に向けた過去の合意について、加盟国が再確認できるかが一つの焦点です。

 Q 今回は最終文書を採択できそうなの?

 A ロシアのウクライナ侵攻が始まって以来、核兵器によって国の安全を保とうとする「核抑止」の強化を求める声が世界的に高まる一方、核軍縮への流れは停滞しています。

 世界の核兵器の9割以上を持つ米国とロシアの核軍縮交渉はウクライナの問題もあって、絶望的です。中国は核戦力を増強しているとされます。英国は21年、核弾頭数の上限を引き上げる方針を発表しました。

 世界の流れを再び核軍縮へと向ける最終文書を採択できるかは、まったく予断を許さない状況となっています。

核兵器禁止条約との関係は

 Q 核兵器を禁止する条約もできたって聞いたけど?

 A 世界には今も、1万2千発以上の核兵器があります。NPT締約国の大多数を占める核兵器を持たない国々は、「核保有国がNPTで定められた核軍縮の義務を果たそうとしていない」と不満を募らせてきました。これらの国々の賛同で17年に採択されたのが「核兵器禁止条約」です。NPTと異なり、核兵器の保有や開発、実験などあらゆることを禁じた初めての条約になりました。条約は批准が50カ国・地域に達して21年に発効しました。今年6月現在で締約国は66カ国・地域になっています。これらの国々は「核兵器禁止条約はNPTを否定するものではなく、NPTを補完するもの」と主張しています。

 

 Q NPT再検討会議には日本からは誰が参加したの?

 A 被爆地・広島選出の岸田文雄首相が、日本の首相として初めて出席しました。演説では、被爆国として日本がNPT体制を守り抜くとの決意を強調しました。

 これまでの再検討会議のときは、核兵器廃絶を強く望む広島、長崎の被爆者も大挙して渡米してきました。ただ、被爆者が高齢化していることに加え、新型コロナウイルスの感染状況も踏まえ、今回渡米したのは数人でした。

 Q 日本に求められる役割は?

 A 今年6月にオーストリアのウィーンで、核兵器禁止条約の第1回締約国会議が開かれました。米国の核兵器で守られる「核の傘」の下にいる日本政府は、「核兵器禁止条約には核保有国が一つも入っていない」として条約に参加せず、締約国会議へのオブザーバー参加もしませんでした。

 日本政府は一方で、核保有国が参加しているNPTこそが核軍縮を話し合う場だと主張してきました。締約国会議に参加しなかった日本に対して、核兵器禁止条約の締約国などからは、「ではどうやって核軍縮に貢献するのか」という厳しい視線が向けられています。NPT再検討会議でどのように具体的な行動を示せるかが注目されます。(福冨旅史)

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