涙のエースはもういない 再起誓って1年後、盛岡中央の斎藤君が力投

西晃奈
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 (25日、高校野球岩手大会決勝、盛岡中央2―3一関学院)

 鮮やかだった。八回裏、盛岡中央の斎藤響介投手(3年)は、投球数が110球を超えても球が走っていた。4番を1球で内野フライに打ち取り、次は三振。最後の打者も見逃し三振に仕留めると、スタンドまで響く声で「よっしゃあ」とほえた。最終回の攻撃に向けて、いいリズムを作った。

 昨夏も背番号1を背負った。大会中に自己最速149キロをマークし、自慢の直球で10年ぶりの8強入りの原動力に。だが、準々決勝で盛岡大付に4―7で敗れた。試合後、「自分のせいで負けた」と涙が止まらない。最後に「来年は直球と分かっても打たれない球を投げる」と絞り出した。

 その後間もなくして、新チームが発足した。昨秋の県大会は学校でコロナ感染者が出て、出場を辞退。今春の県大会は直球が伸びず、1回戦で八回コールド負け。悔しくて号泣した。

 再起を誓った。投球フォームを見つめ直した。前に突っ込み気味だった重心を、後ろにためてから解放することに努め、体重移動をスムーズにした。

 迎えた最後の夏。自慢の直球と制球力の増した変化球で、次々に強豪校をねじ伏せた。初戦で目標にしてきた球速150キロを達成し、次戦では152キロをたたき出した。決勝までの5試合(37回3分の2)で47奪三振。ノーシードから決勝までたどり着き、この日も10個の三振を奪った。

 この試合、チームは6度も走者を得点圏に進めたが、1本が出なかった。相手の校歌斉唱や写真撮影を見つめては、何度も何度も、左腕で目元を拭った。

 試合後、報道陣の前に現れた。そのときには、涙はなかった。「直球は昨夏よりも伸びが出てきたと思いたい」。1年の成果をこう振り返った。「でも、もっと直球の質をよくしたいし、制球力も課題です」

 1年前の県営野球場にいた、涙のエースはもういない。壁を乗り越え、次に挑もうとするエースが、そこにいた。(西晃奈)