「値下げナシ」導入のパナソニック 理由は「バケツリレー」な開発

有料会員記事

栗林史子
[PR]

 他店より1円でも安く――。こんな値引きによる安売り競争が激しい家電量販店の一角で、異変が起きている。その震源は、誰もが知る、あの家電メーカーだ。

 「こちらはメーカーとの関係で、値引きができないんです」

 大阪府内のある家電量販店。ドライヤー売り場の店員が客に説明していた。店員と客、両者の目線がとらえていたのは、1台2万~3万円ほどするパナソニックの高級ドライヤー「ナノケア」だった。

 「現金値引き」「ポイント還元」といった言葉が飛び交い、自他ともに安売りに強みを見いだしてきた家電量販店で、なぜ値引きができない商品があるのか。それも、おなじみのパナソニック製品で。

 その答えは、同社が2020年から本格導入を始めた、家電取引の戦略転換にある。

 「アップルストア」のようなメーカーの直営店をのぞくと、一般的に家電量販店などの小売店は、メーカーから商品を買い取って客に売っている。売れ残って在庫を抱えるリスクは小売店が負う半面、店頭でどんな値段をつけるかは自由だ。価格決定権は小売店にあるからだ。

 メーカーは、小売店が決めた店頭の価格に口出しできない。メーカーが価格を「指示」すれば、原則として独占禁止法違反に問われることになる。メーカーのホームページなどで、商品価格が表示されず「オープン価格」となっているのはこれが理由だ。

 ところがパナソニックは、一部の家電でこの仕組みを「逆転」させた。

 店頭での価格はパナソニックが指示する。代わりに、小売店は売れ残った在庫をいつでもパナソニックに返品できる――。

 在庫リスクを背負うのはパナソニック。小売店は値引きをしなくなるので、パナソニックが小売店に渡していた、値引きの原資となる「販売奨励金」は大幅に減る。

 パナソニックは独禁法への抵触を避けるために、取引導入にあたり、あらかじめ公正取引委員会に相談。「問題はない」との見解を取り付けていた。

 独禁法に詳しい平山賢太郎弁護士は「従来からある委託販売とほぼ同じだ。米アップルiPhone(アイフォーン)など、商品力の強い商品は量販店でもほぼ値下げせず売られている。パナソニックも商品力が問われることになる」と話す。

 いま、この新たな取引の対象…

この記事は有料会員記事です。残り1588文字有料会員になると続きをお読みいただけます。