子どもたちは守られているか 映画「ゆめパのじかん」が問うもの
【神奈川】映画「ゆめパのじかん」は、「川崎市子ども夢パーク」(通称・ゆめパ)に密着したドキュメンタリー作品だ。「ゆめパ」という自由な空間で自分らしく過ごす子どもの日常を追い、「子どもたちは真に守られているか」と問いかける。
地面を歩き回るアリたちの様子に、ぽっかり口を開けたまま見入る少年。厳しい師匠の指示に真剣に耳を傾けながら、大好きな木工に没頭する少女。そして彼らを見守る大人のスタッフたち。映画「ゆめパのじかん」は、子どもたちの日常と表情を丹念に追う。作り手は、前作「さとにきたらええやん」で大阪・釜ケ崎の児童館の子どもたちを追った重江良樹監督と大澤一生プロデュサーのコンビだ。
重江監督が回想する。「広大な敷地の中で子どもたちがやりたいことに没頭し、大人たちがそれを尊重する。不登校の子どもたちの居場所もちゃんとある。色々な意味で濃い場所だと感じた」。複数の場所で撮影する計画を変更し、「ゆめパ」に絞った。
「ゆめパ」は「川崎市子どもの権利に関する条例」に基づき、2003年に同市高津区に開設された。子どもたちが安心して生きる権利や、ありのままの自分でいられる権利などを保障した条例の精神を具現化。子どもの居場所を保障する多様な空間に加え、学校に行かない子どもたちが集える「フリースペースえん」が併設され、日々30~40人が通う。
作中、子ども自身が学校に行かない心根をまっすぐ語る。「(学校の)ノートに写すだけの勉強が嫌いなだけ」「(不登校の理由を問われ)わかんない。答えられる人なんているのかな」
「ゆめパ」の管理を委託されている認定NPO法人「フリースペースたまりば」の西野博之理事長は、映画で新たな気付きを得たという。「大人のお仕着せではなく自分のやりたいことに没頭できる時間が子どもの成長にはとても重要だと、改めて痛感した」
重江監督も語る。「子どもたちは誰にも邪魔されない時間の中で色々なことを考え、変わっていく。この映画でその『時間』を感じてもらえたらうれしい」
県内の上映予定は30日から川崎市アートセンター▽8月13日から横浜シネマ・ジャック&ベティ▽8月27日からあつぎのえいがかんkiki(厚木市)。(浜田奈美)
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