はい上がってきた伝統校の4番 広島商・広本真己、涙は流さない

松尾葉奈
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(26日、第104回全国高校野球選手権広島大会準決勝 尾道4―1広島商)

 どん底からはい上がってきた。だが、春の雪辱は果たせなかった。

 3点を追う六回2死。広島商の4番、広本真己(まさき)君(3年)は内角の直球を引っぱり、左前に運んだ。「長打より出塁」。下位からもつながる打線で、ひたすらつなぐことを心がけてきた。

 甲子園でも優勝を重ねてきた伝統校で、4番の重みを感じてきた。「簡単に任せてもらえない。責任を持って務めなければ」

 だが、道のりは険しかった。20年ぶりに出場した今春の選抜大会は、新型コロナ陽性者が出て2回戦を辞退。「切り替えるしかない」。そう思っても、練習しにくい状況が続いた。

 チームを立て直せないまま迎えた春の県大会は、1回戦で尾道と対戦。左横手投げのエース坂本典優君(3年)に完封され、夏はノーシードで挑戦することが決まった。

 「一球に集中しろ」。荒谷忠勝監督はそう言った。

 コロナ禍で練習が制限されるなか、どう質を高めるか。短時間で素早くバットを振り込んだり、重い金属パイプを振ったりしてスイングスピードを上げた。「浮いた球を一振りで仕留める」。坂本君の横手投げも想定し、下から球を投げてもらって打撃練習を繰り返した。

 単打をつないで勝ち上がってきた今大会。準決勝で立ちはだかったのは、春に屈した相手だった。

 一回、広本君に2死三塁の好機が回ってきた。だが、尾道先発の坂本君のコースをつく投球に対応できず、内野ゴロに。「流れをつくれなかった」。その後も凡打が続き、4打数1安打。打点を挙げられないままゲームセットとなった。

 最後は泣かないと決めていた。相手の校歌が流れるなか、まっすぐ前を見た。だが、4番の責任を果たせなかったという思いは残った。「仲間がつくったチャンスで1本を打てなかった。それが悔しい」(松尾葉奈)

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