半世紀以上にわたり、世界の名画を紹介してきた東京・神保町の映画館「岩波ホール」が、29日で閉館する。ミニシアターの先駆けとして、ここならではの1本を厳選して届けてきた名劇場の思い出を、映画監督の山田洋次さん、元文部相で日本ユニセフ協会会長の赤松良子さんに聞いた。
開館は1968年。当初は多目的ホールだったが、74年、高野悦子総支配人を中心に、知られざる名画を上映するエキプ・ド・シネマ(映画の仲間)運動を始めた。芸術色の強い作品を息長く上映するという興行スタイルを確立し、80年代以降の日本のミニシアターブームの道を付けた。
しかし近年は客層が高齢化していたところへコロナ禍が直撃。今年1月に「新型コロナの影響による急激な経営環境の変化を受け、劇場の運営が困難と判断した」として閉館を発表していた。閉館後の用途は未定だが、ホールは当面そのまま残すという。
開館以来の上映作は、66の国・地域の計274本に及ぶ。公開中のドキュメンタリー「歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡」(ベルナー・ヘルツォーク監督)がラストショー作品となる。
「知的なインテリが集まる場所」山田洋次監督
渥美清さんを誘ったりして、よく通っていました。テオ・アンゲロプロス監督の「旅芸人の記録」(79年)も2人で見ました。渥美さんが「あの男と女はデキてるんじゃないか、なんてことを言っちゃいけないシャシン(映画)なんだろ?」と話したのを覚えています。見巧者の渥美さんらしい、面白い感想ですよね。
総支配人だった高野悦子さんの上映作の選び方が独特で、好きでしたね。本当に観客が入っていて、うらやましいなと思っていました。ある時、中米の映画だったと思いますが、話題にならず、当たらなかったことがありました。
しかし高野さんは「コケて良…