娘たちの笑顔を撮っては黒い台紙に貼り、お母さんが説明を添える。
ちづちゃんのうれしそうな顔。かよちゃんのおちょぼ口。
「ちづちゃん」と家族に呼ばれる綿岡智津子さん(16)は、4人姉妹の長女。おちゃめで明るい、広島のお茶屋さんの娘だ。
すぐ下の妹の香代子(かよこ)さん(12)と、きょうだいげんかをよくしては「あんたらは、いっつもけんかする」とお母さんをあきれさせている。
真夏のある日。
ちづちゃんは、朝から外出した。
午前8時15分。
ちづちゃんが働いていた工場が、突然崩れ落ちた。
大きなけがはない。
何かあったら、ここに集まろう。
家族とそう決めていた高台の民家で待ったが、誰も来ない。
自宅に向かう。
あたりは焼け野原で、家がどこかわからない。
焼け残った台所の一部を見つけた。
洗い場には、見慣れたタイル。
ここが家だ。
子どもの遺体を胸に抱いて、しゃがみ込んだ状態のまま亡くなっている人がいた。
焼け焦げて、2人とも顔がわからない。
その瞬間。子どもをぎゅうっ…
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