第1回数奇な運命たどった被爆バイオリン ウクライナで奏でた青年の葛藤

有料記事核といのちを考える

野島淳=キーウ、岡田将平
【動画】被爆バイオリン A-stories「希望の音色」
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 今年7月19日夕、ウクライナの首都キーウ。街を見下ろす高台の礼拝堂に、もの悲しさをたたえた音色が響いた。

 ピンクの長袖Tシャツと小豆色の長ズボン。長身の青年がバイオリンを鳴らす。イリア・ボンダレンコさん(20)だ。

 日本の音楽家、坂本龍一さんと共同制作した「Piece for Illia」(イリアのための曲)。戦禍に苦しむ人たちをゆっくりと包むように奏でた。

 「とても単純なメロディーだけど、誰もがその意味を理解できる。坂本さんは、いま私たちに必要なすべてを表してくれている」

【動画】「Piece for Illia」を演奏するイリア・ボンダレンコさん=細川卓撮影

 ロシアの侵攻が始まってから5カ月。ボンダレンコさんは音楽活動を続けてきた。「軍隊に行く考えもあった。でも私は音楽で体に傷を負った人、疲れた人の助けになりたかった」

 誰もいない礼拝堂で、ボンダレンコさんはさらに民謡を奏でてくれた。

 「ここからの景色はいいよ。バルコニーにも出てみよう」

 眼下に広がる町並み。ドニプロ川のそばで、虹が雲に吸い込まれるようにかかっていた。

 4年前、ボンダレンコさんは、遠い広島から来た特別な楽器を弾いた。

 原爆を生き延びた「被爆バイオリン」だった。

連載 希望の音色~被爆バイオリンは今日も鳴る

77年前、広島で被爆したバイオリンは、世界各地で「希望の音色」を響かせてきました。いま、核兵器の脅威が世界を揺るがしています。それでも、被爆バイオリンは鳴り続けます。

「私たちの未来の安全は保障されるのか」

 2018年4月、ボンダレンコさんはウクライナ北部のスラブチチにいた。

 かつて大事故が起きたチェル…

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被爆者はいま、核兵器と人類の関係は。インタビューやコラムで問い直します。[記事一覧へ]