「他人の良いところだけ見る天才」出井伸之さん 若手起業家を育成

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伊沢健司
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 ソニー(現ソニーグループ)の元社長の出井伸之さんが、6月に84歳の生涯を閉じた。1990年代後半から経営の浮き沈みを経験し、2005年にトップを退いた。亡くなるまでの約16年間、最も力を注いだのがベンチャー企業の育成だった。年の離れた起業家たちから慕われ、ともに歩みつづけた。根底にはソニー時代から変わらない行動原理があった。

 あの日の出井さんの姿を起業家の柴崎洋平さん(47)は忘れられない。

 ソニーの1998年春の入社式。壇上にいた当時の社長はズボンのポケットに手を突っ込みながらこう語りかけた。「君たち、別にこの会社に長くいなくていいからね」。柴崎さんは「とにかくかっこよくて。何が何でもこの会社でがんばれじゃなかった」と振り返る。

 先輩14人を抜いて95年に社長に就いた出井さんはメディアにもよく登場するソニーの顔だった。インターネットの影響力を見抜き、斬新なデザインで話題となったパソコン「VAIO(バイオ)」などのヒット商品を打ち出した。

 経営トップとしての評価は割れる。元幹部は「社内の求心力を強めることに苦労していた」と明かす。03年には「ソニーショック」といわれた株価急落が起き、2万人の人員削減も発表。05年には会長兼最高経営責任者(CEO)を降りた。

 出井さんはその後も現役を貫いた。06年にコンサルティングや投資をする「クオンタムリープ」を68歳で起業した。

 柴崎さんが「雲の上の存在」…

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