享栄の山本主将、追いかけたライバルとついに 東邦エースに託した夢

高橋俊成
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 28日、高校野球愛知大会準決勝、享栄2―9東邦

 「今までやってきたことは相手に負けていない。後ろにつなぐ」。二回表、1点を先制しなお2死一、二塁。享栄の山本絃登(げんと)主将(3年)は強い気持ちで打席に立った。初球から振りにいき、ファウルで粘る。5球目、内角の直球をはじき返し、1点を加える適時打を放った。

 「何としても倒したい相手だった」。こう断言するのには、理由がある。相手の東邦の先発・三浦心空(こくう)投手(同)は中学校の時のチームメート。当時、三浦投手は遊撃手もしており、二塁手の山本選手と二遊間を組むこともあった。「三浦は当時からチームを引っ張る存在だった」と振り返り、「いつか、愛知1位をかけて戦うだろう」との予感があった。

 互いに強豪校に進学すると、1年生大会でさっそく対戦の機会が訪れた。だが、三浦投手に享栄打線は抑えられ、6回コールドで完全試合という結果に。「3年の大会では三浦を打ち崩し、絶対に東邦に勝つ」。チームの目標が固まった。

 「ずっと三浦の後ろを追いかけてきた」。中学の頃はチームを牽引(けんいん)する三浦投手に対し、自分は補欠。高校でも実力差を見せつけられた。まずはベンチ入りを目指して朝6時からコーチにノックをしてもらうなど、誰よりも練習を重ね、今春からレギュラー入り。主将も務め、大藤敏行監督も「いなくてはならない選手になった」と評価する。

 主将として誰よりも声を出した。新型コロナで辞退を余儀なくされた今春の県大会後のミーティングでは「野球ができることに改めて感謝の気持ちを持とう」と鼓舞。今大会でも、東邦打線に苦戦する後輩のエース・東松快征投手(2年)に「後ろは守っているぞ、打たせていけ!」と声をかけてもり立てた。引っ張られる側だった中学時代から、チームを引っ張る存在へと成長していった。

 試合終盤に集中打を浴び、コールド負けを喫した。でも、追いかけ続けた相手と同じ舞台に立ち、適時打も決められた。試合終了後、東邦の選手たちと笑顔で肩を抱き合い、こう伝えた。「絶対に甲子園出場、頼むぞ」

 「任せろ」。力強く応えた三浦投手に夢を託し、「大学野球で日本一を目指す」という新たな夢に向かって突き進む。(高橋俊成)