第5回繰り返された「産地の使い捨て」 漁場の再生よりも輸入に頼った結末
「熊本県はかつて、日本最大のアサリ産地でした。しかし、1990年ごろからアサリを取り扱う業界の間で『有明倉庫』と呼ばれ、業界の人たちは元大産地だった浅海域を、輸入アサリの出荷調整のための一時保管場所としてきました。(中略)熊本県はアサリロンダリングの要所であり、熊本県地先の海水を飲ませると、消費地では様々な産地のアサリに化けていました」
2008年11月、愛知県豊橋市の山本茂雄さん(58)が熊本県の蒲島郁夫知事あてに送った意見書には、赤裸々な表現が並んでいた。
60年以上続いた家業の貝類専門問屋「山本水産」を5年前に自主廃業し、「アジアの浅瀬と干潟を守る会」の代表として二枚貝の調査研究や環境教育などの活動をしていた。
外国産アサリを干潟にまく蓄養は、産地偽装の温床になるだけでなく、外来生物の持ち込みなどで干潟の生態系に悪影響を及ぼすおそれがある。
生物多様性の観点から「アサリの放流の全面禁止」を要望したが、熊本県が応えることはなかった。
【連載初回】熊本産、一夜にして中国産に アサリのインチキ「みんな知っていた」
業者、漁協、行政、そして消費者も黙認を続けた結果、アサリ偽装の闇は広がっていきました。記者たちが関係者の証言をたどり、黙認の構図を解き明かした連載(全6回)です。
生態系が脅かされる
アサリは潮干狩りなどで日本人にとってなじみの深い二枚貝だ。
1980年代前半までは、国…
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