静清のエース、監督の勧めで投手に 試合終了であふれた3年間の思い

黒田壮吉
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(29日、高校野球静岡大会決勝 日大三島8―1静清)

 九回裏2死一塁。打球が遊撃手へのゴロとなり、試合が終わった。静清の久保陸弥選手(3年)は一塁を通り過ぎたところで、ひざに手を当て動けなくなった。「もうみんなと野球ができないんだ」。マウンドで日大三島の選手たちが歓喜するなか、3年間の色々な思いがあふれ、涙が止まらなくなった。

 愛知県の中学から「施設がよく野球に集中できそう」と静清に進学。元々は内野手だが、長田仁志監督に「いい投手になれる」と言われ、高校入学後に本格的に投手に転向した。

 中学3年の頃から抱える右ひざ痛と付き合いながら、地道にトレーニングを重ねた。昨秋はコロナで大会を辞退。冬もコロナで約1カ月練習できない時期があった。「腐りそうな時もあったが、仲間と一緒だったからここまで頑張ってこられた」。最速141キロ。長田監督が「チームのできは久保次第」と言うほどの頼れる右腕に成長した。

 今大会は、初戦となった2回戦から準決勝まで全5試合に先発してきた。29回3分の1で400球を投げ込み、失点はわずか4。準々決勝後には右ひじ痛が襲ったが、準決勝初日とその翌日の継続試合は、オーバースローからサイドスローに変更。「しっくりくる位置で投げた」。得意のスライダーの曲がり方に変化をつけ、なんとか乗り切った。

 迎えた決勝。満身創痍(そうい)だったが、先発のマウンドは譲らなかった。この日もサイドスローでスライダーを投げ込んだ。だが、それを狙われた。制球にも苦しみ、一、二回に1点ずつ失った。五回1死二塁のピンチでマウンドからおりた。

 その後、継投した投手陣も相手の勢いを止められず計8失点。打線も相手エースを打ち崩せなかった。「気力で投げたがスターターの役目を果たせなかった。目標だった甲子園に行けず、悔しい」。そして仲間への感謝の言葉を口にした。「野手を信じて投げられた。一緒に戦ってくれてありがとう」

 今夏には痛みとつきあってきた右ひざを手術し、さらなる高みを目指す。「大学でも野球を続け、みんなに成長した姿を見せたい」(黒田壮吉)