「名人最後の弟子」ねぶた師デビューへ 作品裏のコイに込めた覚悟
古庄暢
青森の夏の風物詩で、全国から200万人以上の観光客を集める「青森ねぶた祭」。8月2日から3年ぶりに開かれる祭りで、デビューするねぶた師がいる。今春引退した名人・千葉作龍さん(75)の最後の弟子で、「ねぶた師たちが磨いてきた技と伝統を受け継ぎ、磨いていきたい」と意気込む。
7月22日、青森湾に面した公園の一角にあるねぶた小屋で、1台の大型ねぶたが完成した。高さ2メートルある台車に、80人がかりで作品を載せる「台上げ」が終わると、吉町勇樹さん(33)に、千葉さんが「よくやった」と笑顔で声をかけた。
作品は、中国の水滸伝(すいこでん)から題を取った「張順破水門(ちょうじゅんすいもんをやぶる)」。英雄・張順が敵の武将を退け、水門を破る場面を再現。コロナ禍や紛争など、世界各地を襲う現代の苦難を打ち払ってほしい――。吉町さんはそんな願いを込めた。
ねぶた師の世界では、祭りの大型ねぶたを手がけて初めて「ねぶた師」を名乗れる。「プロになった以上、期限までに作り上げないといけない。そんな重圧にずっと押しつぶされそうだった」。吉町さんは半年間に及んだ制作期間を、そう振り返る。
子どものころに見たねぶたの…
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