「NPT会議は俺が行く」譲らなかった岸田首相 源流にある苦い経験

有料記事核といのちを考える

西村圭史
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 岸田文雄首相は、米ニューヨークの国連本部で8月1日に開かれる核不拡散条約(NPT)再検討会議に出席する。日本の首相としては初めてだ。一般討論演説では、戦争被爆の実態を知ってもらうため、広島、長崎への訪問を呼びかけ、新たな基金を創設することを表明する見通しだ。NPTにこだわる首相の思いとは――。

 「行く予定だから(日程は)空けておいて」

 首相は昨年10月の就任直後から、NPT再検討会議への出席を希望していた。国際的には担当閣僚級の会議で、これまで日本の首相が出席したことはない。官邸内では異論もあったが、「俺が行く」と譲らなかった。

 戦争被爆地・広島選出で「核兵器のない世界」を目標に掲げてきた首相にとって、NPTには思い入れがある。「核保有国と非保有国の両方が同じテーブルにつくのはNPTしかない。核保有国をいかにこっちに引っ張ってくるかだ」と参加する意義を語ってきた。

 2月のロシアによるウクライナ侵攻で、思いはより強まった。核兵器の使用も示唆するロシアを目の当たりにし、「やはり核保有国が動かないと何も変わらない」と痛感。「核軍縮・不拡散の機運は冷え込んでいる。日本がやらないと他に誰もやらない」との危機感を募らせた。

分断、目の当たりにした外相時代

 首相には苦い経験がある。2…

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    藤田直央
    (朝日新聞編集委員=政治、外交、憲法)
    2022年7月31日8時24分 投稿
    【視点】

    NPT関連会議への異例の出席で言えば、岸田氏は外相当時の2017年、再検討会議の事務レベルの準備会合に閣僚として異例の出席をし、「三つの向上」を訴えています。(1)核兵器や関連物質の保有状況の透明性(2)核兵器を持つ動機を減らす安全保障環境

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