「巨人の星」のギプスをイメージ 手袋はめるだけ、患者の筋力が改善

渡辺七海
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 奈良県立医科大学の研究チームと、奈良に工場をもつ靴下製造販売の「三笠」(横浜市)が、手指機能を強化する手袋を開発した。地場産業の技術を生かし、パーキンソン病患者の筋力改善や、スポーツでの活用を狙う。

 手袋は手の甲側の面積を狭くした編み方をしており、はめた人の手指に常に反り返る力が加えられる構造。装着した状態で過ごすことで、日常動作で無意識に機能トレーニングができる仕組みだ。

 チームは、パーキンソン病患者に5日間手袋を装着した状態で日常生活を過ごしてもらう実験をし、装着しなかった患者と比較。装着しなかった人には筋力の増加は見られなかったが、使った人には握力などの増加が見られた。特に物を指でつかむ「ピンチ力」の増加が顕著だったという。また、装着時間が長い患者ほど筋力の増加がみられた。

 チームの真野智生准教授(リハビリテーション医学)は「患者のQOL(生活の質)を高めてくれるものはないかという発想から来ています」と話す。

 通常、患者の手のリハビリは、ボールを握るなどのトレーニングが中心で、日常生活で必要な動きとは違う。装着型のトレーニング機器は金属を使ったものがほとんどで、装着すると違和感がある。今回の手袋は、日常利用が可能だ。同じ仕組みを使い、アスリート用としての活用も検討している。

 「星飛雄馬(巨人の星)の大リーグボール養成ギプスのようなイメージですね」と真野准教授。

 手袋は、三笠の葛城市の自社工場でつくられた。島精機製作所和歌山市)の独自技術を用いた「ホールガーメント横編機」で、縫い目のないつくりになっている。三笠は現在、商品化に向け、第三種医療機器製造販売業の許可を申請中だ。

 改良も進めており、糸の卸売会社と相談をしながら通気性などの向上を図るという。開発担当の山本合一さんは、「自分が開発した製品が病気やけがで困っている人に役立つことが実証され感激している。より多くの方に使用して頂けるよう改良を重ね、今後は商品化に向けて進めていきたい」と話した。(渡辺七海)

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