決裂のNPT会議を見た米大学院生 クッキーの型にこめた意外な思い

有料記事核といのちを考える

岡田将平
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 米国・ニューヨークの国連本部で開催され、ロシアの反対で最終文書を採択できないまま閉幕した核不拡散条約(NPT)再検討会議。広島出身で米国の大学院で核兵器について学ぶ女性は議場で決裂を目の当たりにした。落胆したが、広島と世界の人々に後押しされ、「橋渡し」をめざして前を向いている。

 「すごく残念だった」

 米カリフォルニア州のミドルベリー国際大学院モントレー校で核不拡散などを専攻している倉光静都香(しずか)さん(25)は、議長が決裂を告げた時、議場にいた。議場では発言を求める国が相次ぎ、落胆と憤りが広がるのが目に見えてわかった。

 8月に4週間、開かれた会議。倉光さんは最後の1週間、現地に滞在して会議の一部を傍聴し、核軍縮にかかわる専門家らにインタビューした。各国が対話を重ね、文言を修正しながら、合意に近づけようとする努力を肌で感じた。

 閉会後、国連本部近くの路上でオーストリアの外交官、アレクサンダー・クメント氏と偶然出会い、言葉を交わした。核兵器禁止条約の締約国会議で議長を務めたクメント氏から「それでも核軍縮を進めないといけない」というメッセージが伝わった。「(交渉の)当事者も前を向いている。もっと勉強しないと」と背中を押された。

 倉光さんは広島市の広島女学院高で学んだ。平和教育を受け、核兵器をめぐる世界の状況にも関心を持った。高校3年のとき、包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会がウィーンで開いたシンポジウムに参加した。

 「核なき世界が実現すると子どもたちに信じさせてください」。そう訴えたが、国際社会の現実も目にした。「責任ある国が核兵器を安全に管理できるならいい」と考える人とも出会い、被爆地の核廃絶の願いとのギャップを感じた。

 高校卒業後、核兵器について…

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