「異様だな」つぶやいた首相 原発回帰、新たな建設検討指示の舞台裏

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西村圭史 岩沢志気
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経済インサイド

 岸田文雄首相が原発の新増設や建て替え(リプレース)について検討するよう指示した。東京電力福島第一原発の事故後、歴代政権が触れられなかった問題に踏み込んだ。唐突にも映る政治決断は、参院選の前から着々と進んでいた。

 今年5月から6月にかけて、首相は週末ごとに出張先やその移動中に官邸幹部らと原発政策について協議を重ねていた。

 「電力需給は夏も厳しいが冬はもっと厳しくなる」「ウクライナ情勢が膠着(こうちゃく)すれば、来年はさらに厳しくなるかもしれない」

 事務方の説明に首相は耳を傾けていたという。経済財政運営の指針「骨太の方針」を閣議決定する時期で、すでに新増設の検討を次の打ち出しとすることを決めていた。

 昨年来、新型コロナウイルスの感染が落ち着きをみせると、経済回復に向けて原油価格が高騰。国内でもエネルギー価格の抑制が政策課題となっていた。

 「再エネをはじめ水素、小型原子力、核融合といった非炭素電源の技術革新投資強化など、多くの論点に方向性を見いだしていく」

 年明けの1月4日、首相は三重県伊勢市であった年頭会見で、脱炭素電源の選択肢として原発を前面に打ち出し、政策転換への布石を打った。

 この頃から首相周辺では水面下での検討が始まり、政府高官が「リプレースについては何らかの形で言っておかなければならない」と漏らすようになった。

歩調合わせる経産省

 そこに2月のロシアによるウクライナ侵攻を受けたエネルギー危機が襲い、中長期的にも2050年の脱炭素に向けた道筋を示さなければならなくなっていた。

 首相側近の一人は「脱炭素の…

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  • commentatorHeader
    小熊英二
    (歴史社会学者)
    2022年9月2日10時45分 投稿
    【視点】

    原発新増設の賛否はさておき、反対が多数なのを「異様だな」と形容するのは、岸田氏に偏った情報しか入っていないことを示唆しているのではないか。 経済産業省の「総合資源エネルギー調査会」委員である橘川武郎氏は、こう述べている。「経済産業省の

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    福田直之
    (朝日新聞コンテンツ編成本部次長=経済)
    2022年9月2日16時34分 投稿
    【視点】

    「参院選で勝った後、首相は原発政策を転換する」と経済界では選挙前に語られていました。ただ、歴代内閣が避けてきた大きな決断なのに、首相も与党も参院選で国民に問うておかなければ後に禍根を残すのではないかと感じていました。  原発の新増設や

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