モノのように扱われた生い立ち 20人に加害した「自己治療」の闇
村上友里
「おまえなんて産まなければよかった」
アルコール依存症の母親は、まだ幼かった自分にこう言った。
酒を飲むと物を投げて暴れた。「刺し身包丁を投げられた時の、ニタニタ笑う母親の顔が忘れられない」
部屋にとじこもっていたが、幼い自分にまで酒を買う金を求め、いつまでも扉がたたかれた。
8歳の時、母親は働いていた居酒屋の店主と不倫して家を出て行った。小6の時、心筋梗塞(こうそく)で亡くなった。
小学校でも中学校でもいじめられた。万引きを強要され、上履きに画びょうを入れられ、トイレの個室で水をかけられた。
それが嫌で不登校になると、父親にあざができるまで顔を殴られた。家にも学校にも居場所がなく、死を考えたこともあった。
「母親からの愛情に飢えており、その代わりになるものを探していた」
6月2日、東京地裁の法廷で、橋本晃典被告(31)はこう語った。
中3の時、ネットで知り合った男性にホテルで性的被害を受けた。
そんな経験をしてきた被告の関心は、ある対象に向いていった。
ネットで知った自分の特徴
「分け隔てなく接してくれる…